悪しき者に、断罪を-3
「そういうわけだ。別に恨みはないが、お嬢様の命令だ。悪く思わんでくれ」
ニヤニヤ笑いながら、一人がカテリナの顔を覗き込む。
小窓の汚れたガラスから日光が差し込むだけで、小屋の中は薄暗く、男の顔は一層不気味にみえた。
「や、やめてください……フィオレッラさまだって、きっと本気じゃ……」
震える声で必死に訴えたが、一笑されてしまった。
「本気も本気。別に、アンタが初めてじゃないんだよ。お嬢様はおっかないからなぁ」
「これで五人目?六人目だったか?あちこちで、こうやってルーファスさま狙いの姫さんたちを蹴落としてるんだよ」
「そんな……そんな……」
「いや、これが効果覿面でね。自分が輪姦されたなんて、良家の姫さまほど、口が裂けても言えないから、みんな泣き寝入りしてくれるんだよ」
「そうそう。醜聞が広まって一生嫁に行けないより、錬金術ギルドから処女膜の再生薬を買ったほうがマシって、思うらしいな。ハハハ!!!」
「俺たちも楽しめるし、全くお嬢様も、イイやりを方考えてくれたよなぁ」
「でも……でも、貴方達は、悪い事をしているのですよ!?」
今度は、もっと大きな笑い声が上がった。
「さすが天使さま!解りやすいお説教を、ありがとうございますよ」
「騎士って言っても、俺たち下級騎士は安月給でね。娼婦を買うにも不自由するんだ」
無骨な手がカテリナの襟元に伸び、ボタンを一つづつ外していく。
「服を引き裂くのは、ちっとまずいからな。大人しくしてくれよ」
「い、いや……やめてください……」
恐怖にガチガチと歯が鳴り、全身の震えが止らない。
「暴れなきゃ、殴ったりしなくてすむし、それなりに楽しませてやるよ」
心底楽しそうに言いながら、男はボタンを外し終わり、布を左右に開いた。
現れた白い肌と下着に、ゴクリと男達が生唾を飲んだ。
「おいおい、なんだよこの痕。処女じゃねーの?天使さまなんだし」
ルーファスが首筋につけた赤い痕を指され、さらに羞恥が上塗りされた。
「こ、これは……っ」
「さぁ?こういう純情そうなのに限って、以外と遊んでたりするんだぜ」
「じゃ、俺たちも慰めてもらうとするか」
伸びてきた何本もの手に下着の腕から肌をまさぐられ、気持ち悪さに吐き気がこみ上げる。
騎士たちの強い力でしっかり抑えられた手足は、ピクリとも動かない。
「本当に……やめてください……これは、わるいことです……」
涙が溢れ出てきた。すすり泣きながら再度訴えたが、返ってきたのは嘲笑だけ。
まさぐる手はしだいに乱暴になっていき、胸を強く掴まれて痛みに眉が寄る。
レースと白絹のシュミーズがたくし上げられ、コルセットの紐に手がかかる。
「あ……あ……」
恐怖に頭はパニックを起こし、視界がゆらぐ。
( ――ダンザイヲ )
どこからか、懐かしい声が聞えた気がした。
ヴァイオリンの美しい調べも。
周囲の景色が姿を消し、滑らかな夜想曲の旋律にあわせ、瞼の裏に赤い血と銀の十字架が回る。
( ――悪しき者に、天使の断罪を )