VS-2
土曜も日曜も殆ど部屋に籠りっきりで、誰もいない時間を狙って食料を部屋に運び込んでいたスミカは、月曜の朝も起きてこなかった。
しかし、葉子らが出かけた後に起きてきたのだろう。出社した葉子はスミカの姿を見掛けた。
だが、声を掛けようとすると顔を背けられ、これが健人との件と無関係ではない事は容易に想像がついた。
週中になってやっとスミカが、いつも通りの朝を迎えていた。
「おはよ、スミカ」
あくび交じりにスミカに言葉を掛けると、スミカは笑顔で「おはよ」と返してきた。
いつもの、ハムエッグがそこにはあった。安心。
対面の席についたスミカが、口を開くと同時に、二階から健人が降りてきて、スミカの姿を見て驚いたような表情をした。
「あのね、武とよりを戻したの」
「へ?」
「そういう事」
変わり身の早さに唖然とした。ついこの前別れたばかりじゃないか。
スミカもスミカだけど、武君も武君だ。
それを階段の上で聞いていた健人は「良かったじゃん」と言いながら階段を降りて来た。
スミカはいつものお人形のようの笑顔で「うん」と健人に笑いかけた。
あぁ、スミカが、戻ってきた。