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数ミリでも近くに
【大人 恋愛小説】

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おあずけ-2

 そのまま朝を迎えた。
 先に目が覚めた晴人は、横にいる葉子の寝顔を見ようと視線を向けると、あらぬ姿で彼女が寝ている事に気づき、思わず布団を掛けてやった。
 殆ど見えてるじゃないか――。
 掛けた布団が邪魔だったのか、いくらか瞬きをしながら葉子が目を開けた。
「朝だよ」
「朝?それおいしいの?」
「朝にセックスすると気持ちがいいんだよ」
 先程の彼女のみだらな姿が忘れられず、葉子に手を伸ばすと、バシっと叩き落された。
「あのねぇ、好きだけど身体はまだ渡さない」
「何だよ、言葉だけかよ」
「言葉だけじゃご不満?」
「あぁ不満だね」
「下半身でしか恋愛できない人間は猿か犬だ」
 葉子はそっぽを向いて、黙ったままはだけたバスローブを布団の中で直した。
 晴人は猿扱いされても仕方がないような状況だった(それは朝だから、というもっともらしい理由があるのだが)ので何も言えなかった。
 沈黙を破ったのは葉子だった。
「折角気持ちが通じ合えたと思ったのにな」
 初めて相手と心が通じあえた。
 良く考えてみればそうだ、晴人自身だって中学の頃、好きだった女の子に告白して受け入れられ、暫くはそれだけでお腹いっぱいではなかったか。
 ただそばにいる、それだけで、と何かの歌詞みたいだと、思いはしなかったか?
 彼女は今、そういう状況なのだ。それを無理やり「セックスしよう」と仕向けるのは酷い話だ。
「じゃぁさ、葉子が『今日なら』って日でいい。俺が煙草吸ってる時にでも、誘ってくれない?絶対乱暴にはしないから」
「今日なら、って日がなかなか来ないかもよ?」
「待ってるから」
「永遠に来ないかもよ?」
「さすがに待てない」


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