さえずる波の最中-1
「……後悔、してるんですか?」
夕日に染まった貴方は、今にも消えてしまいそうで。
思わず、哀れんだような言葉を吐いた。
愚かな行為だと、知りながら。
「……後悔など、過去を振り返る権利がある者のみに、許されるモノだ」
予想通りの返答に安心した反面、哀憐の情にほだされた。
あぁ、これが彼にとっての日常ならば、なんと寂しい人なのだろうか。
「……寂しい人」
ポツリと呟いたその言葉が、彼の耳に届くことはなく。
いつもと変わらぬ速度で、波は引き、また押し寄せてくる。
私達に、普遍という名の日常は、
許されない。