非日常へのスイッチ-8
「なぁ、マイ、お前どう思う?」
俺は途方も無いトシオからの提案にまだ動揺していた。
マイもユウコから同じような話をされたらしいが、その様子は普段と変わらない。
彼女はマイペースで、あまり物怖じしない性格ではあった。
「……ん〜、あたしは……ちょっと面白そうかなって。でも、カズちゃんの言うとおりにするよ」
「面白いって、お前……トシオさんのこと、好きなのか?」
「トシオさんは格好いいと思うけど、カズちゃんの方があたしは好きだよ。でも、一度くらいこういう事もあった方がいいのかなって」
「お前が、そういう風に言うとはな」
「カズちゃん、最近疲れ気味だし、ユウコさんの事結構気に入ってるんでしょう?」
「そりゃいい人だと思うけど」
「ユウコさんにカズちゃんを盗られるのは怖いけど、それはしないって言ってくれたし。あたしは、二人共信じてるよ。あたしも、たまにはカズちゃんに嫉妬されたりしたいし」
「お前な……お前はトシオさんと、その……」
「同意が無いと、駄目なんでしょ? カズちゃんも、無理矢理は、駄目だよ?」
マイは、どうという事はない風にトシオからの誘いに乗ろうとしている。
トシオの言うように、やはり一度くらいこういう事が必要なのだろうか。
そうなると動揺している俺が、いささか滑稽にすら思える。
多少、何かしらの悩みをマイがユウコに相談している節はあった。
その悩みとこの危険な誘いは、関係があるのだろうか。
その悩みを解消する為の、彼女なりの決断なのだろうか。
俺は、マイの為にこそ、トシオの提案に乗るべきなのか。
それとも、自分の為に……――――――