非日常へのスイッチ-7
「……ねぇ、マイちゃん。カズヤさんとは、うまくいってる?」
なんと切り出していいものか。
横目で洗い物を片付けるマイの横顔を見ながら、わたしはようやくひと声かけた。
「うーん、どうなんでしょうね。なんか、最近お疲れみたいで」
「じゃあ、相談してくれた時から、あんまり変わらないの?」
「そう、ですね。セックスレスって、こういう風になっていっちゃうのかなぁ……あたしも、ユウコさんみたいにスタイルがよければね〜」
「そんな事ないわ。だって、うちもたぶんあんまり変わらないから……」
マイからは、以前カズヤから求められることが年々少なくなったと相談されていた。
わたし自身もそうではあったが、わたしの場合、トシオの性癖によるものなので、厳密に彼女と同じような状況なのかは判断しかねた。
わたしは、性に飢えた状況をトシオに作られているのである。
まさかカズヤがマイにそんな事を考えているとは思えない。
「え〜、トシオさんもそうなんですかぁ? でも、トシオさん、忙しそうですもんねぇ」
「う、ん、そうね。あの、マイちゃんは、カズヤさん以外とお付き合いした男性って、いないのよね?」
「本格的に、という事ならカズちゃんだけですね」
マイは高校の時からカズヤと付き合い、そのまま結婚したらしい。
明るい性格ながらも、一途にカズヤを想っている事に疑う余地は無かった。
とすると、マイは性的にはカズヤ以外知らないのだろう。
そんな彼女に、わたしは大胆な提案をしようとしている。
罪悪感も感じたが、長い人生の中で、他の男のことも知っておくのもいいのではないか。
そんな風に無理やり自分に言い聞かせ、本題に入った。
「他の男性と付き合いたい、とか考えたこと無い?」
「他って、浮気ってことですか? う〜ん、興味はあるけど、実際は無理ですよねぇ」
「無理、じゃなかったら、しちゃう?」
「え〜、でも、バレたら嫌だな。カズちゃんのことは、やっぱり好きですし」
「カズヤさんも、認めてくれたらどうする?」
「え〜、そんな事あるんですか? ユウコさんたらまた……あれ? もしかして本気で言ってます?」
「……あのね、もし、マイちゃんがよければなんだけど――――」