非日常へのスイッチ-3
トシオは、自らが密かに考えている計画の事を言っているようだ。
彼は、少々とんでもない事を考えている。
ある時、トシオはわたしに唐突にこう言った。
私とカズヤ君が入れ替わったら、どうだろうと。
突然何を言い出すのかと思った。そんな事は、あり得ないとわたしは言い返した。
もし、彼らが了承したらどうする? とトシオはさらに訊いた。
わたしは、答えられなかった。トシオは、そんなわたしを見て、ニヤリと笑った。
嫌だとは、否定できなかった。
別にトシオで満足していない訳ではない。
だが、心のどこかでわたしは面白そうだと思っていたかもしれない。
トシオは、わたしの体の貪欲さと、そこはかとなく抱いたカズヤへの好感を見透かしているのだろうか。
無論、ずっと入れ替わるという事ではないだろう。
期間限定の話だ。数時間、あるいは数日、カズヤの妻になる。不快には感じなかった。
自惚れかもしれないが、わたしもカズヤから多少好感を持たれていると思っている。
今の生活も気に入っているが、何か、新鮮な生活が出来そうな気がした。
しかし、思っていることとは違うことをトシオに言った。
「わたしからカズヤさんに、あなたの頭の中で考えていることの話はできませんわ。それに、わたしもそういうの、少し怖いですし……」
「君は、カズヤ君の事が、嫌いなのか?」
「そんなことは、ありませんけど……だからって」
「私が言うのもなんだけど、彼はなかなかいい男だよ。もし私に何かあったら、君のことは彼に任せたいくらいさ」
「あなたったら、カズヤさんにはマイさんがいるじゃないですか」
「それも、そうだな。君、そういえばマイさんも何か悩みがあるらしいって言ってたな?」
「ええ、カズヤさんから、女として見てもらえなくなっているのではないかって……」
「要は、あの回数が減っているって事なんだろう?」
「……それも、あるでしょうけど」
「あの夫婦にとっても、君にとっても、悪くない計画だと思うんだけどね?」
「わたしは、別に……」
「カズヤ君には、私から今度話をしてみるよ。君は、マイさんにそれとなく話をしてくれないかな?」
「……話をしても、きっと聞き入れてはくれませんわよ」
「そうかな? 私はたぶんカズヤ君は了承すると思うがね。確証はないんだが、そうなったら君はこの話、受け入れてくれるんだね?」
「……カズヤさんが、いいと言ってくださるなら、考えます」
立ち上がり下着を着けようとすると、トシオに後ろから抱きつかれた。