平凡な暮らしの中で-6
半年前、あのキャンプ旅行の時、俺は深夜に海岸を一人で散歩していた。
マイは、早々に寝てしまっていた。
ユウコやトシオも隣のテントで既に寝ていると思い、静かにテントの外に出た。
満月が綺麗に出ており、マイも誘えばよかったなどと思いつつ歩いていると、ある岩陰から声がした。
今日聞いたような女の声だ。女の声には、聞き覚えがあった。
俺は、ついそれを確認したくなってしまったのだ。
バレないように、岩陰にそっと近づいてみた。月明かりで、なんとか女の顔が見えた。
ユウコだった。口を半開きにして、陶然とした表情をしている。上半身は何も着けていない。ユウコは四つん這いの姿勢で、豊かな胸が揺れている。
揺れているのは、後ろから突かれているからだ。後ろにいるのは、トシオだろう。
胸が揺れるたびに、あっ、あっ、と声がした。
思わず、もっとよく見たいと思い、近づいたのがいけなかった。
ユウコと一瞬目があってしまったかもしれない。彼女の表情が、一瞬変わったのだ。
少しだけ驚いたような顔。トシオは、気づいてないようで、彼女を突き続けていた。
ユウコはその快感に耐え切れなかったのか、また悦びの表情に戻っていった。
少し笑っているような気がした。俺は、そのまま静かに立ち去ったのだ。
あの時のユウコの表情を思い出すだけでも、おかしな気分になってきてしまう。
その後俺は、知らんぷりを通した。ユウコが俺に気づいたかどうかはわからないが、それを問われることもなかった。彼女も、知らんぷりをしているのか。それとも……。
それからは、顔を合わせるたびに少々意識してしまう。
この顔があんな場所で、などとどうしても思ってしまうのだが、気付かれないように気をつけてはいた。
別に、ユウコとトシオは夫婦なので、そもそも問題は無いのだが――。
そのユウコが、隣を歩いている。
一般の女性が見れば、怯むような場面だったはずだが、何くわぬ顔をしている。