ポテトサラダができるまで-5
白い皿の上に盛りつけられながら、彼女は静かに目を閉じた。その姿はさっきまでの何も知らない少女とは違う、大人の魅力に溢れていた。知ってしまった悦び。戻せない時間。彼女はしっかりと自身の運命を受け入れたのだ。
もうすぐ、彼女の命は終わり、また別の生命を繋ぐためのエネルギーとなる。それでも彼女は満足だった。最期まで、泣きわめくような無様な姿は見せずに済んだのだから。信じられないような快楽を味わったのだから。食卓に並び、人間の口の中に入れられる瞬間、彼女はひとり故郷の空を思い出していた。
さよなら、みんな。短い間だったけど、わたし、生まれてきてよかった。
女に生まれて、よかった。
(おわり)