伝わらない気持ち2-1
黒い翼を広げ、一瞬のうちに間合いを詰めたティーダが鋭い爪をキュリオに浴びせた。
神剣と爪とがぶつかり合い、その衝撃でホールのほとんどのガラスが割れ・・・アオイの頭上めがけて落ちてくる。
「きゃああっ!!」
「アオイッ!!」
ふたりの声が重なり・・・ティーダがキュリオより一足早くアオイの体を抱きしめた。
「・・・怪我はないか?」
「ありがとうございますティーダ様・・・」
見つめ合う二人をみて・・・キュリオの瞳が温度を下げた。
「その汚らわしい手で私のアオイに触れるな・・・」
キュリオは煌く神剣の切っ先をティーダに狙い定めた。
「やめてっ!!!お父様っ!!!!」
ティーダの前に両手を広げて立ちはだかるアオイ。
『・・・キュリオ早くアオイを連れ出せ。我の攻撃に・・・お前たちも巻き沿いをくらうぞ』
「・・・・・・」
剣をおろし、ため息をつくキュリオ。
「さぁアオイ・・・」
手を伸ばすキュリオの手を見つめアオイは・・・
「・・・私は帰りません・・・」
そう言うアオイのもとに小さな姿が飛び込んできた。
「おい!!お前!!
姫はにいちゃんの姫なんだぞ!!」
「・・・まだ言うか」
冷たく見据えるキュリオの神剣がトワの頭上に振りかざされた。
「・・・っ!!だめ・・・っ!!」
必死に手を伸ばすアオイはトワの体を抱きしめた・・・
「・・・・・・っ」
・・・誰のものかはわからない、優しい光があたりを包んでいる。
その瞬間・・・光の中にアオイは・・・
懐かしいような、悲しいような・・・言葉では表せない“何か”をみた。
(・・・何?これ・・・)
目をあけたエクシスの手からは弓と矢が消えていた。キュリオの手からも神剣が消えている・・・
キュリオに吹き飛ばされたヴァンパイアたちは淡い光に包まれ、目を覚ます。やがて起き上がり・・・痛まない体を不思議そうに見ていた・・・・・・