淫習の村-4
「離して! ねえ、恭介、怖いよ、助けて!」
「瑠奈、騒いじゃだめだって言っただろう。何も怖いことなんて無いよ。いまから瑠奈をみんなにお披露目するだけさ」
「お披露目……って……」
「ずっと聞きたがっていたみたいだから、教えてあげるよ。僕の村のことを」
長い廊下を歩きながら、恭介は薄く笑って話し始めた。男たちは何も反応しない。よくできたロボットのように、同じペースのまま歩いていく。
「僕の村には古くから守り神がいてね」
「守り神……?」
「そう、僕たちの村を繁栄させ、文字通り守ってくれる大切な存在だよ。僕たちはそれを『主』と呼ぶ。主には年に一度だけ、必ず若い女をひとり差し出さなければいけない」
「若い、女……」
「うん、それも若いだけじゃだめなんだ。穢れの無い女……つまり男性経験のない、処女でないといけない。でも、瑠奈も気がついたかもしれないけど、この村には男しかいないだろう? だから、外から連れて来なくちゃならない」
背筋がすうっと寒くなる。恭介の話を聞きたいのに、その先を聞いてしまうのが怖くて仕方が無い。恭介は真っ直ぐに廊下の先を見つめたまま、わたしのほうを気にもせずに話を続けた。
「主に捧げた女は、主によって僕らの大切な子孫を身ごもることになる。そして子供を産み落としたあと、女たちは何故かみんな死んでしまう。まあ、死体はしばらくすると主が食べてしまうから処理に困ることはないんだけどね。だから、後々面倒なことにならないように、僕らはできるだけ身寄りのない女を探すようにしているんだ」
「そ、そんな……だから……わたし、だったの……?」
「うん、そうだよ。瑠奈は素直で、僕の言うことをよく聞いてくれたもんね。僕らは別に犯罪者になりたいわけじゃないから、適当な女をさらって来るというような真似はしたくない。『この村に来たい』と望んでくれる子じゃないとね」
「いや……いやよ、恭介、わたし……そんなの嫌……」