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淫習の村〜触手に捧げられる花嫁〜
【ホラー 官能小説】

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結婚前の儀式……?-1

 仕事の引き継ぎや部屋を引き払うための準備で目の回るような忙しさの中で、1カ月は瞬く間に過ぎた。ごく親しい友人には結婚することと、引っ越しすることを伝えたものの、お祝いムードというよりは、わたしのことを心配する声ばかりだった。

「ねえ、それ本当に大丈夫なの?なんかおかしくない?」

「そうだよ、結婚をそんなに急ぐ意味もよくわからないし、ご両親に挨拶も無しでいきなり引っ越して彼の実家で同居なんて……」

「おまけに新しい住所も教えてもらえないなんて異常だよ。もうちょっと考えた方がいいんじゃないの?」

 あまりにもそんなことばかり言われるので、不安になって恭介に相談してみると、困ったように首をかしげられた。

「みんな君が幸せそうだから、嫉妬しているだけじゃないかな。それとも僕が信じられない?」

「ううん、そうじゃないの。ごめんなさい、ちょっと気になっただけだから……」

 嫉妬、とは違うような気もしたけど、このときのわたしにとっての真実は、恭介の言葉だけだった。度重なる忠告にも耳を貸さないわたしに、友人たちもやがて何も言わなくなった。

 そして、引っ越しの日。家具も衣類も、すべて実家で準備しているから何も持っていく必要はない、と言われたために、わたしの荷物は貴重品を入れた小さなバッグだけだった。わけのわからない不安に押しつぶされそうな気持で、3月下旬の早朝、わたしは住み慣れた街を出た。

 長かったひとり暮らし、学生時代の思い出……助手席の窓の外を流れていく風景を見ていると、涙が溢れて止まらなくなった。マリッジブルー? ……わからない。幸せな出発のはずなのに、ハイな気分になりきれない。そんなわたしの様子に気付いているのかいないのか、彼は無表情のまま車を運転し続けた。

 高速道路を1時間ほど走り続けた後、車は田畑の広がる舗装されていない道に下り、いくつかの峠を越えて長いトンネルを抜け、細く曲がりくねった1本道がどこまでも続いているだけの山道に出た。ハンドルを握ったまま恭介はやっと表情を緩め、いつもの優しい笑顔をわたしに向けた。凹凸の激しい路面に、車がガタガタと揺れる。

「ずっと走り通しだったから疲れただろう? あと少しで着くから、もうちょっとだけ我慢してくれるかな」

「わたしは大丈夫。それより……村のひとたちと本当に仲良くやっていけるかなって、それだけが心配で……」


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