恭介のプロポーズ-3
だから、恭介の両親との同居も喜んで受け入れるつもりだったし、むしろやっとわたしにも両親や親戚が出来るのかと思うと、それも嬉しくて仕方が無かった。後で友人にそのことを話すと『自分なら絶対にあり得ない、そんなところにお嫁に行くなんてどうかしてる』なんて言われてしまったのだけれど。
その日のうちに、ふたりで具体的な引っ越しなどの日程を決め、恭介の希望通り3月の末には彼の田舎で結婚式をすることになった。さすがに結婚前に一度もご両親に挨拶に行かないのはまずいのではないか、とわたしが言うと、
「大丈夫だよ、僕がしっかり言っておくから。瑠奈はそんなこと気にしないでいいよ」
と言って、恭介はまた笑った。笑顔になると口元からきれいに並んだ白い歯がのぞく。この笑顔もわたしは大好きだった。田舎のことについては、それ以上何を質問しても話をはぐらかされてしまい、行ってみればわかることだから、と繰り返されただけだった。
役所関係の届けに必要だから、と新しい住所を聞いても、手続きは引っ越してからゆっくりやればいいよ、と言って、それすらも答えてもらえなかった。
思い出せば、この頃からいくつも不自然な点はあった。でも幸せ気分に浮かれたわたしは、それに目を向けようとはしなかった。