恭介のプロポーズ-2
「あのね、瑠奈。ぼくの地元の結婚式は、残念だけど友達を呼ぶようなタイプのものじゃないんだ。どちらかというと、村の人たちに花嫁を紹介する、というのが主体だからね。友達とは別の機会にパーティーを企画しても良いし、そのときは瑠奈の希望に合わせるよ。だから今回だけは、僕のわがままを聞いてもらえないかな?」
「そう……わかった」
真っ白なウエディングドレスを着て、友達みんなから祝福される光景を夢見ていたわたしは、少しがっかりした。
「あはは、そんな顔をしないで。瑠奈はきっと村の人たちに気に入ってもらえるよ。すぐにむこうでの生活にも慣れて、僕たちの子供を授かるんだ」
「わたしたちの、子供……」
「瑠奈、いつか言ってただろう? 田舎でたくさんの家族や親戚に囲まれてにぎやかに暮らしたいって。初めは不安があるかもしれないけど、結婚式が終われば全てうまくいく。瑠奈は僕たちの家族になるんだよ」
うっとりと夢見るような表情で話し続ける恭介に、わたしもすっかり嬉しくなってしまい、結婚式のことは恭介が言うように友達向けに後でパーティーでもすればいいか、と思い直した。ふたりの間の子供、きっと可愛いだろうな……村の人たちにもたくさん可愛がってもらって、自然いっぱいの環境のなかでのびのびと成長していくんだわ……
わたしの両親は交通事故ですでに他界している。連絡が取れる親戚もいない。そのため、わたしは小学校低学年から高校を卒業するまでの間は施設で暮らしてきた。施設の先生たちに恵まれていたためか、特に生活で不自由した記憶も無ければ、辛い思いをしたという覚えもない。ただ、祖父母から曾孫まで何世代も同居する大家族として暮らすことや、たくさんの親類に囲まれてにぎやかな生活を送ることに対しては、昔から強い憧れを抱いていた。