束の間の安息-1
「なぁひめー?お前の国ってどんなところなんだ?」
と、大臣の後ろからトワが顔をだした。アオイの膝に甘えるようにしがみついてくる。
「ったく・・・いい加減にお前は・・・」
ティーダがアオイとトワを引きはがそうとする。嫌がるトワがアオイのドレスの裾を引っ張った。
慌てたアオイは・・・
「ティーダ様、大丈夫ですよ」
アオイはトワを抱き上げて膝に乗せた。
大喜びのトワは上目使いに懸命にアオイの顔を見ている。
「悠久は・・・
日差し柔らかく、人も霊獣も穏やかな性格で優しさにあふれています。たくさんの花が咲いていて・・・水も清らかで・・・」
「・・・俺!!ひめの国に行ってみたい!!」
「ガキが行くとこじゃねぇよ。こいつの国の王は気性が荒いんだぜ?」
キュリオの気性が荒いと聞いてアオイは目を丸くした。
「お父様はお優しい方ですよ」
おかしそうに笑うアオイに、ティーダはおもしろくなさそうに呟いた。
「あいつの話になるとお前は幸せそうな顔をする・・・」
「へー、そこにも王がいるのか」
トワの素直な反応にティーダは毒気を抜かれてしまった。
「さて、ガキは向こうに行ってろ」
傍に控えていた家臣に手をひかれトワは口を尖らせている。
「ひめ!!またなーっ!」
元気のよい声が響いてアオイは微笑みながらトワを見送っている。
「・・・・・・」
「・・・アオイ・・・このままここで暮らさないか?」
真剣なティーダの眼差しがアオイをとらえた。
と、次の瞬間・・・
轟音とともに城全体が激しく揺れた。
突然の出来事で、驚きのあまりアオイが目を見開くと、ヴァンパイアたちも何事かとざわつき始めた。
「ティーダ様っ!!」
家臣のひとりが血相をかえて駆け寄ってきた。
「何者かの手により外界の門がっ!!は、破壊されましたっ!!」
「・・・来たか」
「ティーダ様・・・まさかそれって・・・」
アオイの手が震えだす。
他国の外界の門を破壊できる者など・・・・心当たりはふたりしかいないのだ。
そのとき、一層激しい轟音がして巨大なホールの天井が崩れた。
逃げ惑うバンパイアたち。
崩れた天井の合間から見慣れた姿をアオイは見つけた。
「・・・お父様・・・エクシス・・・!!」