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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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吸血鬼の宴-1

ティーダの唇が離れて肩に手をのせられた。


「もうすぐ食事の用意が整う。それと・・・ささやかな宴も開こう」



「い、いえ・・・そこまでしていただくわけには・・・」



ティーダは話が聞こえなかったようにアオイの返事を無視し、並べられているドレスを選び始めた。



「黒もいいが、やっぱりお前には白が似合う。・・・髪飾りはこれがいいな」



一通り衣装を決め、時間が来たら呼びに来るとティーダは部屋をでていった。



アオイは戸惑いながらドレスに手を伸ばす。さわり心地のよい上質な生地に、胸元には見事な装飾を施してある。


髪飾りは派手でも地味でもない花を象った銀の細工が美しく・・・ティーダのセンスの良さが際立った。



(今夜だけ・・・今夜だけお言葉に甘えさせてもらおう・・・)



アオイはシャワーを浴びてドレスに着替えた。サイズまでぴったりなことに驚きつつも着飾り、鏡にうつったアオイはとても大人っぽくみえた。



(キュリオがこの格好見たら驚いたかな・・・?い、いけない、私ったら・・・)



首をぶんぶん振り深呼吸をしていると扉をノックすると同時にティーダが入ってきた。



(・・・返事する前に・・・は、はいって・・・っ!?)



「お前が風呂入ってるときに俺も邪魔しようとしたんだけどな・・・鍵閉めてただろ」




「え・・・っ!!」



「冗談だ、すぐ顔を赤くするな。襲うぞ?」



優しく顎を持ち上げられティーダの笑みをたたえた唇が近づく。



両手でぐいーっとティーダを押しのけてアオイが逃げる。



「ははっ」



おかしそうに笑いながらも自分の選んだドレスに身を包んでいるアオイをみて納得したようにうなずいた。



「よく似合っている」



さぁ、いくぞ。とアオイの手をひいてティーダと二人部屋をでた。




廊下を歩いていくと、やがて巨大なホールの中に足を踏み入れた。


(さ、ささやかな宴って・・・)


見渡す限りに美しく妖艶なヴァンパイアたちが祝杯ムードさながらに集まっていた。



「おお、なんとお美しい姫君か!!」


「あのハープの奏者か!!」


「お似合いのおふたり様ですわっ」


などと口々にアオイを褒めている声が聞こえる。いたたまれず下を向いてしまうアオイは、目の先にある玉座にティーダが座ったのを見て足をとめた。








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