ニコラウス捜し-4
ごう、と局地的暴風を巻き起こして、それは着陸した。
「おじいちゃん」
腕をかざして目をかばいながら、行は暴風の中心に呼びかけた。
白いボア付きの赤い服に三角帽子、真っ白い髪、髭。がっしりと大きな体躯。
孫の欲目を抜きにしても、堂々として貫禄十分、優しい目をした格好の良い老人だ。
「おおう、やっぱり行か。どうした」
久しぶりに見る孫の顔に相好を崩す祖父に、行は複雑な気分になった。
「おじいちゃん、今日は十二月二十二日だよ」
祖父の笑顔が固まった。
「出発は、おばあちゃんが旅行から帰って来てからって云ったろ」
祖母さえ帰って来れば何もかも良くなるだろう。祖父はしっかりしているようで、妻がいないとだめなのだ。
それにしても、この忙しい時期に旅行に行かなくたっていい。
行は内心でぼやきながら、祖父に向かって手をのべた。
「帰ろうおじいちゃん」
既に配ってしまっていたプレゼントを、何とか回収し終えた四人が帰宅すると、母と伯母達がこたつの中からお帰りと迎えた。
対策会議を召集したのだと母は云ったが、卓上コンロと空になった土鍋を見ると疑わしいものだ。
協会本部から届いたFAXには何のお咎めも記されていなかった。朝になって子供たちが気付く前に、事態を収拾できたことが評価されたのだ。
二十四日のデートに支障はない、と。
拳を握ってガッツポーズをとりかけた行は、そのまま凍りつくことになった。FAXから続けてこの一文が流れてきたのだ。
『今年度より三年間の業務において、このたびの捜索員三名を補助として同行すること』
郁だけは少しばかりうれしそうだったけれど。