欲望のまま-1
(黒い鳥・・・?)
アオイの視界に黒い翼が飛び込んだ。
「可哀想に・・・」
聞き覚えのあるまた別な声にアオイは我に返った。(今の声は・・・)
『・・・ヴァンパイア・・・ティーダか』
「・・・ティーダ・・・ッ!!!」
キュリオはアオイを背に庇い、異空間から神剣を引き寄せた。
「お父様っ!!!」
アオイの顔から血の気が引いた。
ティーダを睨みつけるキュリオのオーラに殺気がみなぎる。
(お父様はきっとティーダ様を殺してしまう・・・っ!!!)
「精霊王エクシス殿までアオイの姫君の虜となったか・・・」
赤い瞳に・・・黒い髪。
不敵に笑うティーダに足がすくんだ。あの時の・・・奪うようなキス・・・
・・・ドクン・・・
一瞬目の前が真っ暗になりアオイはよろけた。(・・・なに今の・・・)
「覚えているか?アオイ・・・お前に口付けた時のことを」
ティーダに目を向けると更に激しい動悸に呼吸が乱れた。
「・・・あっ・・・ぁ・・・」
手足がしびれ、目の前にいるキュリオの背がかすむ・・・異変にきがついたキュリオとエクシスが私の名前を呼んでいる。
『アオイ!!!』
「アオイッ!!!!」
崩れるアオイの胸には[黒の刻印]がきざまれていた・・・。
足元から黒い渦が広がりアオイの体を包む。意識を失いかけているアオイは・・・もはや手を伸ばす力さえも奪われていた・・・。
「残念だったな
アオイの姫君は俺の花嫁になる女だ・・・誤って手を付けられては困る」
鬼のような形相で神剣を振りかざしたキュリオが目にもとまらぬ速さでティーダに斬りかかる。
一瞬遅れたティーダに神剣が牙をむいた。
「くっ・・・!!!」
高く飛び上がりながら周りを見渡すとエクシスの姿がない。
『・・・・・・我はここだ』
空間を捻じ曲げるような圧倒的な力が悠久の城を包んでいた・・・。
王たちの激しい戦いに家臣や女官たちは怯えながら身を寄せ合っている。
『・・・・・・貴様には死を与えよう』
エクシスの右手には光が集まり・・・銀の弓矢が形となって出現した。静かに弓をひき・・・キュリオもティーダに狙いを定め地面を蹴った。
まばゆい光とともにふたりの王の一撃がティーダを貫いた・・・