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たそがれ天使
【痴漢/痴女 官能小説】

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前編-1

 今日は仕事が早く終わったので定時に会社を出た。

 乗り換え駅のビルに入っている家電量販店で、パソコン売り場と映像ソフトのコーナー
をひと通り見て回った後、少し離れた場所にある大型書店まで足を伸ばすことにした。特
に目的があったわけではなく、まだ夕食まで時間があるのでちょっと寄り道して帰ろうと
気まぐれに思っただけだった。
 駅ビルから表通りへ出ると、辺りは既に暮れ始めていて、夕刻のラッシュアワーを迎え
た街は、道路から溢れ出しそうなほど混雑した車の列と忙しなく行き交う人々の喧噪に包
まれていた。西日が向かい側のビルのガラス窓に反射して、赤みを帯びた光線が目に差し
込んで眩しい。遮るように手のひらをかざして、オレは足早に通りを歩いた。

 暦の上では秋だったが、真夏と変わらない日中の熱気が路上にまだ漂っている。オレの
勤める会社はクールビズ推奨で、ポロシャツと綿パンで出社するのが許されていたから、
スーツを着込んでいるような連中よりはマシな格好をしていたものの、生来が汗っかきの
オレは額や首筋に汗が滲み出てくるのを感じた。
 大型書店の建物が見えるところまで来ると西日の当たる角度が変わり、手のひらをかざ
す必要がなくなったので、オレは綿パンのポケットからタオル地のハンカチを取り出し、
今にも流れ落ちそうになっていた汗を拭いながら速度を緩めずに歩いていった。

 書店内は、ほどよく空調が効いていて、入ってしばらくすると汗が引いた。まだ少し湿
っている肌とポロシャツが擦れるときのヒンヤリとした感触が妙に心地よかった。
 文庫の新刊、既刊、文芸書・話題書の棚を興味の向くままにあちこちと物色した後、ス
ポーツと音楽の雑誌をペラペラと捲って何冊か立ち読みした。
 そろそろ帰ろうかと思って店の出口へ向かう途中、トイレの方向を案内するプレートが
目に入り、オレは、ハンカチを水で濡らしていくことにした。乗り換え駅まで戻る道中の
暑さを少しは凌げるかもしれないという思いつきからだった。

 汗っかきのオレは、夏中、タオル地のハンカチを手放せない。汗を拭う度に新しい物を
用意するわけにもいかないので、必要に応じて水で洗い、衣服や鞄に滲みて来ないように
小さなビニール袋も一緒に携帯して、同じ物を繰り返し使えるようにしていた。
 トイレまで行って洗面台でハンカチを洗い、堅く絞ってから折りたたんでビニール袋に
入れ、綿パンの後ろポケットにしまった。目の前の大きな鏡に向かって姿を映し、少し乱
れた髪を手ぐしで直して、オレはトイレから出た。


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