凌辱試験-1
なぎさはファイルを開き、1ページ目から順々に読み進め、空欄を埋めた。内容は、家族構成や自分の長所、短所、今後の人生の目標、仕事に対する考え方などを問うようなものだった。ここまで来て、不採用にはなりたくない。慎重に文章を考えながら、出来るだけ模範的な答えを書いていく。
8割ほど設問の答えが記入できたところで、面接室に佐々川とは別の初老の男が入ってきた。なぎさの父親くらいの年齢だろうか。短い白髪を綺麗になでつけ、貫禄のある体格をしている。眼鏡の奥の瞳が柔和に細められる。
「は、はじめまして、卯原なぎさと申します」
あわてて立ち上がって頭を下げると、男は「座ったままで結構ですよ」と落ち着いた声でなだめるように言った。
「甲本です。さきほどの佐々川の上司にあたります。なんでも、素直で良さそうな方が面接を受けに来られている、とあなたのことをたいそう誉めていましたよ」
「いえ、そんな……」
さきほどの佐々川と同じ位置に座り、なぎさと向かい合う。記入途中のファイルをぱらぱらと見て、仕事に対する考え方の項目の部分を指さした。
「卯原さん、あなたは仕事に対してどの程度の覚悟がお有りですか?」
「覚悟、というと……」
「会社組織と言うのは、遊びでは無いんです。多少、個人の考えと違うところがあっても、会社の考えを優先して動いてもらわなくてはいけない。そうでなければ、物事は円滑に進みません」
「はい……」
甲本の口調はやや厳しく、なぎさは何か叱られているような気持ちになった。その表情の変化に気付いたのか、甲本は口調を和らげて続けた。
「まあ、難しい話は飛ばすとして、まずは弊社を信用していただきたいのです。収入や休日に関する条件を先ほど佐々川がお話したかと思いますが、決して悪くない条件でしょう?
弊社は卯原さんを採用するにあたって、あなたに一番適正だと思われる部署への配属を考えています。これから行うのは、やや特殊な試験ですが、難しいものではありません。合格された場合は、先ほどの条件通りにあなたを本採用します。よろしいですね?」
「はい、よろしくお願いいたします」
「それでは、筆記はそれくらいにしておいて、実技試験を始めます。荷物はこちらの机の上にでも置いてください。さあ、こちらに立って」