凌辱試験-2
言われたとおりに荷物を置き、なぎさは座っていた椅子の横に姿勢よく立った。甲本はなぎさのまわりをぐるぐると歩きながら「ほう、いいね」と呟き、手元の資料に何かメモを取った。
「仕事をする上で、健康というのは欠かせない要素です。少しチェックをさせていただきますので、上着を脱いでもらえますか」
「あ、はい」
ジャケットを脱ぎ、椅子の上に掛ける。甲本はまるで洋服屋がサイズを確かめるときのように、なぎさの肩、腰 足まわりを順番に両手で押さえていった。そして、背後にまわった甲本が怪訝な声を出した。
「ん? これは……卯原さん、少し気になる部分があるのですが、両腕を真上に上げてもらえますか?」
「え? は、はい」
何か問題があったのだろうか。この半年、決して健康的とはいえない生活を送ってはいたが、これまでに大きな病気などしたこともない。言われるままに両腕を上げると、甲本の手が脇のすぐ下あたりに触れた。思わずキャッと声が出て体を引いた。
「あ、あの、すみません、くすぐったくて……」
苛立った甲本の声が飛んでくる。
「卯原さん、これは試験ですよ? 少しは我慢してくださいね。あまり動いたりされますとこのあとは減点対象ですよ」
「えっ!? わ、わかりました、申し訳ありません……」
こんなことでせっかくの仮採用を取り消されたりしたら堪らない。さっきと同じ両腕を上げた姿勢で、甲本に背を向けた。
甲本の手は脇の下から腰までのラインをなぞるように何度か撫で、後ろから手をまわして胸をぎゅっと鷲づかみにした。それは思いのほか強い力で、なぎさは痛みに顔を歪めた。でも下手に動いたりできない。声も出さずに、ただ正面を向いたままじっと我慢した。
「ああ、佐々川が言っていた通りですね。とても素直な方だ。弊社はあなたのようなひとを求めていたんですよ……」
胸をゆっくりと揉みしだきながら甲本が耳元で囁く。背筋に細く痺れるような感覚が走る。何と言っていいのかわからず、小さな声で「はい」とだけ答えた。そのまま手を動かしながら、甲本は背後からなぎさに問いかけた。
「ところで、卯原さんは、男性経験は何人くらいお有りですかな? もちろん、セックスの経験という意味です。仕事をしていく上で、メンタル面の強さにも関わってくることですから、きちんと隠さずに答えてください」
「……ひ、ひとりだけ……です」
どうしてこんなことをされているんだろう。恥ずかしさに声が震えた。それでも答えないわけにはいかない。手を払いのけることも、動くこともできない。甲本が嬉しそうに笑った。胸をまさぐっていた手が離れる。なぎさはホッと息をついた。
甲本はなぎさに椅子に座るように勧めながら、事務的に言葉を続けた。
「そうですか。少々、弊社で働いていただくのには経験不足の可能性がありますね……それでは、正面を向いて顔を上げてください。このシャツのボタン、一度全部外していただけますか?」
「ボタン、を……?」
「身体検査だと思ってください。恥ずかしがる必要はありませんよ。あなたと同じ部署で働く方々は、皆同じ試験を受けているのですから」
「そ、そうなんですね……わかりました」
とにかく言われるままにしなければいけない、不採用になりたくない。なぎさはもう何も考えないようにして、シャツのボタンをひとつひとつ外していった。ジャケットを脱ぐことさえも考えていなかったので、シャツの下は薄いピンクのブラだけ。シャツの合わせ目からブラのレースがちらちらとのぞいてしまう。両手でシャツを抱え込むようにして隠した。