貴方が居て、私が居た

【その他 その他小説】

貴方が居て、私が居た-1

アスファルトに写った影を十秒見つめて空を見上げると、自分の影の形をした穴が開く。自分はそこにはいないのだけれど、まるでそこにいるように見える。
たとえそこにいなくてもいい。
自分自身にだけ見える自分が、そこにいればいい。

「ね、見えるでしょう？」

言葉が遠く響く。
簡単に自分の存在を確認できるこの方法。
あの子が教えてくれたこの方法。

教えてくれたあの子は
もう、いない。