撮影会、大人の夜-1
龍と真雪はそれぞれ自転車に乗ってロッジを出た。
「気持ちいいね、マユ姉。」
「うん。あんまり暑くないし、風もひんやりしてる。」
真雪が前を走っていた。龍は彼女の後ろについて、彼女のペダルをこぐ長く白い脚や、こぐ度に規則正しく動くショートパンツ越しの丸いヒップを眺めてはため息をついた。「マユ姉、きれい・・・・。」
「何か言ったー?」真雪が振り向いた。
「い、いや、何も。」
30分ほどこぎ続けて、二人は草原が広がる場所までやって来た。彼らは自転車を降りた。
「マユ姉、水、はい。」
「ありがとう。」真雪はペットボトルを龍から受け取った。
「すっごい景色。」
「ほんとだね。」
「身も心も解放される感じがするね。」
「龍くん、素敵なこと言うね。」
「マユ姉と一緒だから余計に。」
「嬉しい。」
「ねえ、マユ姉、ここで写真撮っていい?」
「いいよ。いつでも。」真雪は自転車の前の籠に入れていた麦わら帽子を取り出してかぶった。
「いいね、夏らしくて。」すでに龍はカメラを構えていた。真雪が微笑む瞬間にシャッターを押した。「何だか、すっごくかわいらしい感じだよ、マユ姉。」
「そう?」真雪は思わず笑顔を作った。また龍がシャッターを押した。
「ちょっと太陽の方を向いてみて。」
「こう?」
「そう、それから左手で帽子を押さえて、そう、そのまま。」龍はアングルを決めて、連写した。
それから龍は真雪を座らせたり、伸びをさせたり、草の上に寝転ばせたりして、ものの数分の間に大量の写真を撮った。
「龍くん、プロみたい。」
「まだまだだよ。父さんにさえ褒められたこと、滅多にないよ。でも、さすが一眼レフ。このカメラ、操作性抜群だよ。ボケ味もきれいだし。」
「龍くん、」真雪が少し恥じらいながら言った。「あのさ、あたしのヌード、撮ってくれない?ここで。」
「ええっ?!」
「お願い。」
「こんなところで?!」
「龍くんに撮って欲しい。今のあたしの全てを。」
龍はもじもじして言った。「じ、実は・・・・。」
「え?なに?」
「僕もずっと前から考えてたんだ。マユ姉のヌードが撮れたらいいな、って。」
「なんだ、そうだったの?早く言えば良かったのに。」
「いや、女のコにそんなこと言ったら、いっぺんに嫌われちゃうよ。普通は。」
「それはそうか。」
「で、でも、人が来たらどうしよう。」
「大丈夫だよ。あ、」
「どうしたのマユ姉。」
「ケン兄だ!」
龍は自分たちが並べてとめた自転車の方を振り向いた。健太郎が、さらに先に行った方から戻ってきていた。
「よっ!なんだ、お前たちも自転車借りたんだ。」
「そうなの。」
「マユの撮影会か?龍。」
「うん。」
「ケン兄、お願いがあるんだけど。」真雪が言った。
健太郎は自転車を降りた。「何だ?」
「そこでさ、見張ってて。」
「見張る?」
「そう。誰か来たら、早めに教えてね。」
「な、何をするつもりなんだよ。」
「あたし、ヌードになるから。」
「ヌっ!ヌードだって?!」
「そう。」
「お、お前ら、そんなことをしにここまで来たのかよ!」
「あたしが龍くんにお願いしたの。」
「まったく、お前どこまで突っ走るかな。」健太郎はかぶっていたキャップを目深にして赤面した。「いいよ。わかったよ。なるべく短い時間で済ませろよ。」
「うん。ごめんね、ケン兄。」
真雪は着衣を脱ぎ始めた。草に座り、ショートパンツのままトップレスに麦わら帽子というスタイルで数枚、ショートパンツを脱ぎ、白いショーツ姿で数枚、そして全てを脱ぎ去り、オールヌードの写真を数枚。眩しい夏の光の中で真雪の肌は輝いていた。愛らしい茂みの柔らかなトーン、少し汗ばんだ乳房のきらめきさえ、龍は余すところなくカメラに収めたのだった。
膝を抱えて撮影現場に背を向けていたはずの健太郎は、鼻にティッシュを詰めて赤面していた。