撮影会、大人の夜-2
「ごめんね、ケン兄。」真雪が元の姿に戻って健太郎のところにやってきた。龍もカメラに保存された画像を確かめながらやってきた。
「まったく、なんで俺がこんなこと・・・。」健太郎はまだ赤い顔をして二人を見上げた。
龍と真雪は健太郎の横に並んで座った。
「気持ちいいよね、広くて。」真ん中に座った真雪が伸びをした。
「そうだな。」健太郎も言った。「それにしても、お前ら、本当に大胆だな。」
「そうかな。」龍が言った。
「ま、真雪の方が大胆なような気もするが。」
「遺伝なのかも。」
「父さんの?母さんの?」健太郎が訊いた。
「たぶん両方。」真雪が笑った。「ねえねえ、ケン兄、ママとケンジおじって、ただの兄妹じゃなかった、って本当?」
「真雪、何か勘づいたな。」
「今まであの二人を見てて、あたし思うんだ。何か違うって。」
「何か違う?父さんとマユミ叔母さんが?」龍が訊いた。
「そう思わない?龍くん。」
「確かに。そう言われれば・・・。」
「もう、お前ら一線を越えてるから話してもいいと思うけど、」健太郎が語り始めた。「実はな、ケンジおじとうちの母さんは、高二の時にお互いを初体験の相手として選んだんだ。」
「ほんとに?!」真雪がちょっとびっくりして言った。
健太郎はちらりと龍を見た。「龍、ショックだったか?」
「ううん。だって、昔の話じゃん。」
「ま、そりゃそうだ。」健太郎はちょっと拍子抜けしたように続けた。「そのつき合いは約二年半続いた。」
「長っ!」龍が言った。
「だよな。兄妹で愛し合うっていう普通では考えられない状態が二年半も続いたってっから、もう驚きだ。」
「でも、さすがに二人は結婚できないから、別れるしかない。しかし、そこには高二の時からずっとケンジおじの親友だったケニー父さんがいた。」
「父さんの大学には、二年先輩の母さんがいたんだよね。」龍が言った。
「ケニー父さんも母さんのことが好きだったから、ケンジおじは泣く泣く母さんを父さんに譲ったんだ。」
「泣く泣く・・・か。」真雪が悲しそうな顔をした。「辛かっただろうね、ケンジおじもママも。」
健太郎が言った。「しかたないよ。兄妹では結婚できないからな。だけど、ケニー父さんもミカさんも二人の気持ちやそれまでの歴史、全部知ってたから、二人が時々会って愛し合うことを許したんだ。」
「心が広いよね、パパもミカさんも。」真雪が言った。
「何となくわかるな。母さんって、そういう人だよ。」龍がちょっと誇らしげに言った。
「俺もそう思う。超いい人だよ。セクシーだし。」
真雪が健太郎を見た。そして眉をひそめて言った。「なんでセクシーなのが『いい人』に繋がるのよ。」
「え?あ、いや、一般論だ。」健太郎はおどおどし始めた。
「ひょっとして、」真雪が言った。「ケン兄って、ミカさんに憧れてたんじゃない?」
「あ、憧れてたよ。スクールであんなにスマートに泳げるんだからな。」
「ケン兄、時々母さんをじっと見てたりしてたよね。スクールの時。」龍が言った。
「あたしの予想では、」真雪が言った。「ケン兄、ミカさんに迫ったでしょ。」
「な、何を根拠に?!」
「ハワイでさ、妙にミカさんに絡んでたじゃない。それに、」真雪はにやにやしながら言った。「ハワイでの二日目の夜、なかなか部屋に戻ってこなかったよね。ねえ、龍くん。」
「うん。そうだったね。マユ姉と二人で、ケン兄、何してんだろうね、って話してたんだ。」
「お、お前ら起きてたのか?!」
「夜、眠れなくて二人で話してたよね、龍くん。」
「うん。」
「あ、あれはだな、そ、その・・・・。」
「もういいじゃん、隠さなくても。」真雪が優しく言った。「パパたちだって知ってることなんでしょ?」
「わ、わかったよ。言うよ。」健太郎はまた顔を赤くして白状し始めた。「あの晩、お、俺はミカさんに童貞を捧げたんだ。」
「やったー!」龍が叫んだ。「おめでとー、ケン兄!」そして派手に拍手をした。
「やっぱりそうだったんだー。」真雪も言って健太郎の背中をぱんぱんと叩いた。
健太郎が大声で言った。「そ、そういう龍だって、あの晩初めて、」
「あーっ!やめてやめてっ!」龍は健太郎の言葉を遮って慌てた。
「何、なに?龍くんどうしたの?」
「何でもないよ、マユ姉。」
「お前、卑怯だぞ、俺だけに恥をかかせようったって、そうはいかないからな。」
「だ、だって、恥ずかしいじゃないか。」龍も負けずに赤くなっている。
「観念しろ。」
龍はうつむいた。「わかったよ。いいよ。言っても。」
「自分で言えよ。」健太郎が促した。
「龍くん、何があったの?聞かせてよ。」
「あ、あの晩、僕、マ、マユ姉を抱く夢、みちゃってさ、」
「えー、ホントに?あんなにちっちゃかったのに、もうそんなこと考えてたの?龍くん。」
「ゆ、夢の中でのことだよ。」
「それで?」
「僕、初めてあの時し、射、射精しちゃったんだ。」
「夢精だよ、夢精。」健太郎が言った。「それが龍の精通だったわけだ。つまり、大人への扉を開けたってわけだな。」
「おめでとう、龍くん。」真雪も拍手をした。
「い、いや、その対象そのものの人から祝われるのも、何だか・・・・。」そしてぽつりと言った。「オトコって、いやらしいよね。」
「それが思春期ってもんだよ。」真雪は笑った。