親しき友-1
眠ってしまったアオイを腕に抱き、寝顔を覗き込むキュリオの顔もまた幸せそうだ。
(この世にこれほど愛しいものがあるとは・・・)
アオイの存在を確認してはキュリオの心は優しい愛で満たされていった。
夜も明けて人の時間で言えば午前六頃だろう。感覚的にキュリオはいつもの目覚め時間であることを感じていた。
(大臣に見つかってはまた娘離れが出来ていないと笑われるな・・・)
いつもの家臣たちとのやり取りを思い出しキュリオは穏やかに笑った。まだ・・・このことは私たちふたりだけの秘密にしておこう。
アオイが17,8になるまでは・・・穏やかに過ごしたい。
アオイの頭をもう一度なで、キュリオは自室へと戻った。
「おはようございますキュリオ様」
廊下を歩いていると例によって大臣と出くわしてしまった。
「姫様のお部屋からお戻りですかな?」
「ああ、昨日は色々あったからな。傍にいてやりたかった」
(また過保護だとからかわれるだろうか)
「キュリオ様不在時を狙うとは・・・我々はティーダ殿の前ではあまりに無能で・・・姫様をお守りできなかった・・・」
「・・・己を責めるな」
「姫様はご立派でございました・・・見事な結界を生成され・・・」
「・・・・・・」
「不用意に悠久を離れぬよう私も努めよう。この国全てを守るのが私の役目」
「・・・キュリオ様・・・」
姫を傷つけられたにも関わらず家臣を咎めないこの王を・・・この寛大な王を誇らしく思う。
この国がこれほどまでに豊かで、安泰なのは紛れもなくこの王の心が何よりも美しいためだ。
「ありがとうございます・・・」
キュリオの後ろ姿を見つめ深く頭を下げている大臣の目には涙が浮かんでいた。
金の刺繍の美しい衣をまとったキュリオは広間に来ていた。
中庭を見るとだいぶ修復されているがドラゴンが暴れた爪跡があちこち残っている。
そのとき家臣の一人が近づき、しばらく顔を合せていない親友の名を口にした。
「精霊王エクシス様より使いの者が来ております」
懐かしい響きにキュリオは頷いた。