大人になりたい-1
涙があふれ嗚咽がもれる。
キュリオを起こさないように口を押えるので精一杯だ。吐き出せない気持ちが胸を締め付ける。これ以上堪えるのは無理だと判断したアオイはベッドを抜けだそうとした。
「ん・・・アオイ?」
いけないっ!!
とっさに駆けだしたアオイだが、キュリオの手のほうが速かった。
強く抱きしめられて身動きがとれない。
「・・・どうした?泣いているのかい?」
「わ、わたし・・・」
キュリオは黙ってアオイの言葉に耳を傾けている。心を痛めるほど苦しい選択をさせてしまったことに後悔しながら・・・。
「私、きっとお父様のことが・・・一人の男性として好き・・・」
予想もしないアオイの言葉にキュリオは息をのんだ。
「早く・・・お父様と釣り合うような・・・大人の女性になりたい・・・っっ」
泣きじゃくるアオイに戸惑いながらも嬉しさが込み上げる。
「今・・・お前が大人じゃなくて良かったと本当に思ってしまったよ」
「え・・・」
また鈍い痛みが走る。
お父様は・・・一体どっちなの?
やっぱりこんな私は娘としか見れないってこと・・・?
アオイの考えを察したのか慌ててキュリオが説明する。
「違うよ、アオイ。いま君が子供で良かったって言うのはね・・・」
『大人の君だったら私は自分を抑えきれそうにないから』
そう耳元でつぶやいた。
真っ赤になって口をパクパクさせる私に、
「ゆっくり大人になればいい。
もう私の心はお前のものだから」
鼻がぶつかりそうな距離で愛を囁かれ、私は笑って頷いた。
お互い引き寄せられるように深く深く唇を重ね、夜は更けていった。