父か、恋人か・・・-1
驚きに目を見開いていたアオイだが、キュリオの口付けを拒むことはしなかった。
・・・優しい唇に眩暈がする。
・・・しかしキスなどほとんど経験のないアオイは息継ぎのタイミングがわからず息苦しさに顔を背けた。
「息・・・止めていたの?」
穏やかに笑うキュリオを見て恥ずかしさが込み上げた。
「だ、だってお父様そ、そんなこと私わかりません・・・もの・・・」
恥ずかしそうに俯くアオイが可愛くて顎に手を添えながら親指で唇をなぞる。
「驚かせてしまったね」
「だが私はもう君を娘として見ることは出来ない」
心臓が大きく高鳴った。キュリオは真剣だ。
(ずっと父親として見てきた人・・・優しく強い大好きなお父様。ティーダ様の口付けは怖くて震えが止まらなかった・・・。でも・・・お父様のキスは・・・)
まだ実感がないのか、アオイはキュリオを確かめるように頬に触れた。キュリオはアオイの手の感触に目を細めている。アオイは自分の気持ちがわからず戸惑った。
迷っているアオイを見透かしているキュリオは、
「返事は今すぐじゃなくていい。
お前の返事を聞くまでは今まで通りでいよう」
そう言ってキュリオはアオイを抱きしめた。いつか君が私を男として見てくれることを願って・・・。
アオイは眠れずにいた。
キュリオは規則正しい寝息をたてている。いつも寝相の良いキュリオは私にぶつかってくることはない。私の寝相が悪いせいで私がキュリオにぶつかっていくのみだ。
一度激しく蹴りを入れてしまいキュリオが驚いて目を覚ましたことがあった。それから共に寝るときは抱きしめられて眠ることが多くなった。(こうすれば動けないでしょう?)と微笑むキュリオ。
「・・・お父様はどうしていつも優しいのですか?」
小さく呟き、先程キスを交わした唇に手を伸ばす。女性よりも美しく、誰よりも愛しいお父様。(お前がいつか誰かに奪い去られるのではないかと思うと・・・胸が張り裂けそうなんだよ・・・)
胸に痛みが走る。
それって・・・お父様にも言えることじゃ・・・お父様が他の女性にとられたら私・・・
胸に嫌な気持ちが溢れた。
この唇に他の女性が・・・
この腕の中に他の女性が・・・
「・・・っ」