戸惑い2-1
キュリオの控えめな唇の間から舌が現れ優しく唇をなぞる。思いっきり目を見開き硬直するアオイ。
ゆっくり唇は離れていきキュリオの手も離れた。
「もう大丈夫だ」
ティーダのそれとは違い、別の気持ちがアオイの心を乱していた。・・・キュリオから目が離せない。私は今どんな顔をしているんだろう。とたんに恥ずかしさが込み上げ、
「ぁっ、ぇっと、その、ありがとうございます、おとうさま・・・」
急いで視線をそらして紅茶を淹れようとする。背後にいるキュリオが移動する気配がした。
「お前の部屋にくるのはどれくらい振りかな・・・」
ベッドに腰掛けてキュリオがこちらを見ている。
「は、はい、いつも私がお父様の部屋に・・・押しかけちゃってるから・・・こちらにはあまり・・・」
「・・・私がいないときはどうしていたんだい?」
「ぁ、お父様がいらっしゃらないときでも私・・・」
「これは驚いた、・・・本当に?」
よほど意外だったのだろう。
キュリオが目を丸くしている。
「ぇぇ、本当に。お父様に抱きしめられているみたいで・・・私・・・」
その時、キュリオがベッドに横になった。
私の枕に顔をつけている。
「あぁ、本当だ。アオイに抱きしめられているようだね・・・」
いつもなら一緒になってベッドに飛び込み大好きなキュリオを思う存分抱きしめているところだ。だけど・・・今のアオイにはそれが出来なかった。
「アオイ、おいで」
びくっと震え足が動かない。
いつもと違う自分に動揺しながら自分を叱咤する。(こんなのおかしい、いつもの私じゃない・・・お父様に変に思われちゃう・・・)
おずおずとベッドに向かい腰を下ろす。キュリオを見やるとベッドをポンポンと叩き、横になるよう促される。
腕を差し出され・・・私は顔を寄せた。キュリオの繊細な顔がそこにある。目が合うと心臓が跳ねた。
たまらず顔を背けると・・・
「このまま子供のままで・・・」
胸に鋭い痛みが走る。
(お父様は私が子供のままのほうがいいの・・・?小さいままの私のほうが・・・)
キュリオはアオイの小さな背中を見つめていた。