戸惑い-1
ティーダが国に戻ると女官の一人が近づいてきた。
「ティーダ様お帰りなさいませ」
うやうやしく一礼する女官に視線だけ向けて笑った。
「なんだ、嬉しそうだな」
「えぇ、あのあと悠久のキュリオ王がいらっしゃったんですのよ?」
「ふっ・・・」
「本当に麗しく素敵な王でしたわ。しかしあの様子だと・・・姫君を女として見ているかもしれませんわよ?」
「やはりそう思うか?」
「まだ子供なのでしょう?」
「まだ子供だったが俺はあの娘が気に入った。必ず俺のモノにしてみせるよ・・・」
「ふふ」
ティーダは今すぐアオイを独占した気持ちにかられていた。
「あと数年だ・・・待っていろアオイ」
ティーダの瞳には妖しい光が満ちていた。
城内が静まった夜。
自分の部屋のテラスで月の光を浴びているアオイがいた。あのままキュリオが来てくれなかったら・・・不安と共にティーダの唇の感触が戻ってくる。(・・・ゃ、ゃだっっ!!)
涙をにじませならが唇を激しく拭う。
扉を叩く音がして振り向くとキュリオが立っていた。
「お、おとうさま・・・」
「・・・今日は私の部屋に来ないつもりだった?」
「はい、その・・・お疲れだと思って・・・」
「そんな気を遣わなくていい。今夜は私がお前に逢いたいから・・・共に居たいから来た」
「は、はい・・・」
アオイはキュリオを部屋へ促した。
キュリオは整えられたままのベッドを見てアオイが眠れず床に就いていないのを確認した。
「アオイ」
紅茶を入れていたアオイは驚いて手を止めた。名前を呼ばれただけでこんな反応するなんて私どうしちゃったんだろう・・・。
わずかな戸惑いもキュリオは見逃さなかった。背後からアオイを包むように抱きしめた。怯えたように肩が跳ねる。
「・・・・・」
手がガクガクと震えだす。
キュリオの手が離れたかと思うと頬に手を添えられ・・・視線を合わせられる。
はっとしたようにキュリオがアオイの口の端に唇を寄せた。
「・・・っっ!?」
驚くアオイだが、キュリオの目は悲しみにあふれていた。
「唇から血が出ている・・・」
「あ・・・」
先程強くぬぐってしまったせいで切れてしまったのだろうか。慌てて手の甲で唇を抑えようとした。が、その手を抑えられ、キュリオの顔が近づいた。
「ん・・・っ」