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ジャングルジムの上で
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ジャングルジムの上で-1

NO.1
あぁ面倒くせえ。学校なんて誰が創ったんだ。あんな窮屈で、息苦しくて、宗教じみた場所。真面目に行ってたら気が狂いそうだ。今日だってやっと逃げ出して来れた..。
此処はいつもの公園。俺は毎日学校から抜け出してこのジャングルジムの下に居る。親に無理やり入らされた名門高校は俺にとっちゃただの監獄みたいなもんだ。親は俺が抜け出してばっかだから毎日学校まで執事を見張り代わりに付けて送迎させてる。でも昼休みにみんなの目を盗んで此処に来てる。
俺は大手コンピューター会社社長の息子。だから家族は後を継がせる為、俺を立派な優等生にしようとしているが、この様だ。勿論俺は後を継ぐつもりはないし、優等生になるつもりもない。
自分の事は自分で決める。親の敷いたレールの上をただ安穏と歩いていくだけなんて、そんなくだらない事は無いだろう。
俺は今この時が大好きだ。誰にも邪魔されず、自由なこの時が。今日は昼寝でもして時間を潰そう。そう思い目を閉じた。閉じたままでも太陽の光が分かる。ふとその光が遮られる。影が出来たのだ。びっくりして目を開けると、ジャングルジムの上に誰かが居る。よく見ると少女だ。その瞳はじっと俺を見ている。


NO.2
『お兄さん何してるの?』
少女が話しかけてきた。「ぁ..えーっと....サボリ?」
俺は本当の事を答えた。『ふーん..。学校はイヤなの?』
「ん?..あぁ..まあな...お前も学校行かなくていいのか..?」
『うん。行かない。』
「ははっ..俺と同じだな」
『もう行けないんだよ..』
「何か言ったか?」
『何でもないよ。』
そう言うと俺に穏やかに笑いかけた。
少女はユズリと言って、歳は14らしい。俺はその日ユズリと日が暮れるまでいろんな事を話した。
『ねぇ...人間は自分の言葉や想いで、何だって出来るんだよね。』
「あぁ。そうだな。」
ユズリのその言葉が胸に染み込んでいった。

次の日も俺は学校をサボった。まぁ何時もの事だが..。するとユズリが居た。ジャングルジムの上から俺に気付いて、手を振っていた。「あれ、お前また居んの。」
『お兄さん来ると思って。』
「何でよ?」
『楽しいもん。』
「あ...」と思った。なぜだろう。ユズリの言葉はひどく心に突き刺さる。それは決して悪い意味じゃなくて、俺のことを少しでも必要としてくれてるのか?と思う事が出来るから。だから俺もこうやって毎日ユズリに会いに来るんだ。


NO.3
『ねぇ。お兄さんの誕生日はいつなの?』
「俺?5月12日だけど..」
『5月12日..』
「何かあるのか..?」
『忘れないで。その日はあたしにとっても、凄く大切な日なんだ。』
「何?」
『その日になれば分かるよ。あたし、今日はもう帰るね。』
「え?あ..あぁ...じゃあな..」
『うん。』
ユズリはそう言うといつも通りの笑顔でその場から去っていった。俺はユズリの言葉が気になって仕様がなかった。でも5月12日まではあと3日。だから黙って待つことにした。
次の日ユズリは此処には居なかった。今まで俺が来た日は何時ものように居たはずなのに。少し心配になった。昨日の言葉もかなり意味深だったから。でも俺はユズリのことを何も知らない。もしかしたら用事が有ったのかもしれないし、もう来たくなくなったのかもしれない。とにかく何か理由が有るのだろうと思い、その日は気にしないでおこうと思った。
次の日ユズリはいつも通りジャングルジムの上に居た。俺は心の何処かで安心して微笑んだ。
いつの間にかユズリは居て当然の存在になったんだと実感した。でなきゃこんな気持ちになんて成らないから。ユズリと居るとカラダが安らぐ。その時俺はもしかするとユズリの事が好きだったのかもしれない、と今になって思う。
『お兄さんの誕生日明日だね。』
「あぁ。でも俺にとっちゃ別に何でもない日だけどな。」
『おめでとう』
「まだ明日になってないけど?」
『うん。でもたぶん、明日には言えないから。』
「え...?」
『そんな気がする。』
「何かよく解んねぇけど、どうも。今迄誕生日祝ってもらった事なんか無かったから..。」
『うん』
そう言ってユズリは微笑んだ。その日は何時もより時間の流れがゆっくりに感じた。


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