出会い-2
巨大勢力を持つ五大国にはそれぞれ偉大な王がいた。[死の国]王はマダラ、[吸血鬼の国]王はティーダ、[雷の国]王はエデン、[精霊国]王はエクシス。そして[悠久の国]王はキュリオ。数百年続く冷戦の中、キュリオは枯れかけた泉に杖をつきまばゆい光で泉を満たす。みるみる輝く水が湧きだし大地を潤した。安心したようにそこから離れると、
「キュリオ様!!」
家臣が声をあげて走ってきた。
「どうした?」
キュリオは家臣の次の言葉を待つ。
「霊獣の森で赤ん坊の泣き声がしまして、現在数人が捜査に向かっているところでございます!」
「赤ん坊が霊獣の森に?」
(親に捨てられたのか・・・)
キュリオは胸を痛めながら自らも霊獣の森へと足を向けた。
森の中を歩くとユニコーンが赤ん坊を守るように立ちはだかっている。キュリオは怯えることもなくユニコーンの傍に立つと優しく頭をなでる。警戒心の強いユニコーンに近づくことが出来るなどキュリオ以外いないだろう。
「ああ、心配ない。私が預かろう。」
ユニコーンはキュリオが赤ん坊を抱きかかえたのを確認するとどこかへ行ってしまった。人も獣も大自然さえもキュリオが絶対的な王であることを認めているのだ。
「よく眠っている。おなごか・・・?」
心配する家臣に城に帰還すると合図を送り、キュリオたちはその場を後にした。
あのとき拾った赤ん坊は人で言えば15歳になっていた。キュリオの見た目は25歳程だが、実年齢は500を超えている。王たる者の寿命は人のそれとはまったく別のものだ。だからアオイと名前が付けられたこの少女さえキュリオの一生で見てしまえば一瞬の輝きとなるだろう。いつか人の一生分の寿命を終え消えてしまうだろう。わかっていながらも自分を慕い傍を離れぬこの子が可愛い。
「キュリオお父様?」
私室で書物に目を通しているキュリオの元にアオイの声が届いた。
重い扉はまだアオイには開けるのは難しいか?と一人で笑いながらドアをあけてやる。艶やかな茶色の髪をなびかせアオイが抱きついてきた。
「困った子だね。まだ一人で眠れない?」
優しく頭をなでてやるとアオイは不満げな顔を向けてきた。
「夜じゃなきゃお父様と一緒にいられないんですもの・・・最近ちょっと怖いこともありましたし・・・。」
キュリオはアオイを部屋の中へ入るように手をひいて、ぐっすり眠れるようハーブティを淹れてやる。
「一緒にいてやれなくてすまない。して、怖いこととは・・・?」
カップを受け取ったアオイはキュリオのベッドに腰掛け俯いている。なかなか話そうとしないアオイの隣に座るキュリオは顔を覗きこんだ。
「アオイ?」
おずおずと何かを取り出し、それが手紙であることがわかった。(これを読めばわかるのか。)とキュリオはそれを受け取った。
キュリオは目を疑った。
それは・・・
五大国の1つ[吸血鬼]の国の王・ティーダからのものだったからだ。手紙の内容はアオイと直接逢いたいという・・・まるで恋文のような内容だった。
「・・・こんなものいつの間に?」
「3日前です、お父様・・・。」
不安げに見つめるアオイを抱きしめ、大丈夫だお前は何の心配をしなくてもいい。そう言いベッドに寝かせた。アオイは優しいキュリオの手とキュリオの匂いのするベッドに包まれこれ以上ない安堵感に目を閉じた。
穏やかな寝息をたてているアオイの額にキュリオは口付けを落とした。そしてティーダからの手紙を怒りにも似た感情で握り潰した。