クリスマス-2
店から出る時に、着けてきたマフラーを鞄に仕舞い、課長から貰ったマフラーを首に巻いた。
「凄く似合う」
そう言われ、私は全身の血液が顔に集中するのが分かった。改めて言われると凄く恥ずかしい。
店を出て、駅まで歩いた。
「課長が夏に奥様と腕を組んで歩いてるのを見て、凄く羨ましかったんです」
「うん」
課長は穏やかに頷いた。
「でもこうやって、クリスマスを一緒に過ごせて、プレゼントまでもらえて、これ以上望んじゃいけないなって今は思ってます」
課長は私の横顔を見て「優しいね」と言った。
「こんな不憫な恋愛をさせてしまっているのに、君は文句一つ言わない。本当に優しいね」
本当は文句の一つや二つ、言いたい。腕を組んで歩きたい。手を握って歩きたい。夏には奥さんに会わないで欲しかった。居室の――あの写真は剥がして欲しい。
でもそんな事は言えない。私は永遠に、本当の一番にはなれないのだから。
だったら不満を漏らさず、笑って時を過ごしたい。
同じ阿呆なら踊らにゃ損、損。そんな場違いな言葉が頭をよぎり、思わず一人でこっそり笑ってしまった。