第1章-6
「そうそう、私の話より、一度そこへ行って聞いてみたら?
貴女に合うお仕事があると思うわ・・」
「そうね、それって、魅力ありそう、聞いてみようかな」
美紗子は、百合子の話を聞きながら、多少の冒険を犯しても、
話くらいは聞いてみる価値があると思った。
今の生活費を切りつめ、がんじがらめの生活はきつかった。
自分の小遣いは勿論、娘にも最近服も買ってあげていないし、
昇格した主人の小遣いも、増やしてはいない・・
マンションは家族の念願であり、その夢は叶えたが、その代償も大きかった。
その為に主婦の美紗子は、毎日切りつめ、息苦しかった。
百合子の紹介するその(仕事)が、どんなものか・・・
それによって、自分を多少犠牲にして得られる物ならチャレンジしてみようかしら、
そう思い始めていた。
報酬や、百合子の態度や人柄から言って、まともなアルバイトではないと想像できる。
しかし、話だけ聞いて、もし良ければ・・・
もし、それが男性の相手をする仕事だとしても、
3,4回で・・10数万・・それは魅力だった。
それに回数がもっと増えれば・・
そう思うと益々好奇心が強くなっていく。
「話を聞いただけで簡単でないことは分かるわ、男の人のお相手よね・・」
「そうよ、美紗子さん、男性のお相手をするのよ」
「それで、身体を?」
美紗子は、女性が男性の相手をしてお金を貰うのは、売春をイメージしていた。
「身体?そうね・・でも、間違いではないけれど、少し違うかな?」
「男の人とセックスをするのじゃないの?」
「そうねぇ、売春とはちょっと違うかな」
「そうなんだ」
美紗子は、百合子とそんな会話をしながら、
話の内容が思いも寄らない展開になり、少しとまどったが
今更、引き返せないし、興味に気持ちが高ぶり、思わず唾を飲み込んでいた。
それは、(誰にも言える話)ではない、と美紗子は心の中で理解した。
あの金額を聞けば、簡単でないことは想像できる。
だが、もし身体を男に任せるとして、それで高額を得られるのなら。
自分の身体のセクシャルな不満も解消できる・・
そう思いながら、美紗子の理性は徐々に狂い始めていた。
掛け替えのない我が家を手にした為に、犠牲を強いられたストレス・・
それを、ここで誰知らずに取り戻せるのなら、と。
そう思った瞬間から、美紗子の家庭は違う方向へ向き始めた。
それは、飽くなき女の欲望の為であり、
犠牲になるのは美紗子を信頼する夫の達哉であり、
純真な高校生の娘の由紀かもしれない。
セックスのストレスと、生活費の疲れで美紗子の心は我慢の限界だった。
掛け替えのない家族との生活、それよりも美紗子の欲望の方が勝っていた。
「ええ、セックスをするとは限らないのね、まあそれを伴えば倍増するかも」
百合子は、美紗子を見て含み笑いをした。
美紗子が乗ってきたことに、満更でも無いようである。
百合子は女性をそこへ紹介すれば、報酬が貰えることになっていたからだ。
更に、その女性が働くとなると、紹介した百合子にはボーナスが貰える。
百合子は、最近知りあった美紗子を何とかそこへ紹介したいのだ。