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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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fainal1/2-1

 空が白みだしてきた。
 夏という季節の中で唯一、微睡めるくらいの涼感を覚える時刻なのだが、

「くそ……」

 ひとり、険しい眼で天井を凝視する者があった──直也だ。
 昨夜からまんじりとも出来ぬまま、朝を迎えてしまった事に苛立ちが募る。昨夜の告白がきっかけとなっていた。

 この機を逃せば、いつ、想いを告げる機会が訪れるのか分からない。そんな焦りが、思い切った行動にさせていた。
 無論、打算などあっての事じゃない。唯、自分の気持ちを知ってもらいたい思いで、賭してみた。
 もう、同級生というポジションは要らない。一人の異性として見て欲しかった。

 そんな直也に対して、有理の応対は冷ややかだった。

 ──お断りよ。

 脳裡に再び、昨夜の出来事が甦る。

「わたしね。一番じゃないと駄目なの」
「ど……どういう意味だよ?それ」

 有理の顔が、外灯に照らされ浮かび上がる。表情と相まって眼が冷笑を湛えていた。
 先程までの愛らしさある仕種は失せ、明からさまな貶みの態度へと急変した。何故そうなったのか、直也には解せない──戸惑うばかりである。
 気詰まりな雰囲気が漂う中、有理は更に追い討ちを掛けた。

「額面通りよ。直也君が本当に好きなのは、わたしじゃないってこと」
「ち、ちょっと待てよ!俺は……相田の事が好きだから言ったんだ。それが違うって、それ可笑しいだろッ」

 ──言い分が無茶苦茶だ!

 納得いかない直也は食い下がろうとする。しかし有理は、そんな直也の様子を鼻で笑うと、

「……そもそも、勝負事と恋愛を同列視するなんてナンセンスだわ」

 そう言い棄て、直也に背を向けると玄関扉に手を掛けた。

「じゃあね、直也君……」

 別れのひと言を残し、有理は玄関向こうに消えてしまった。直也は心に未練を持ったまま、有理が消えた玄関を暫く見つめていた。

(あの時、何であんなに意地悪になったんだ……)

 ふられるのは一向に構わない。想いを告げたからといって、必ず成就すると思うほど自分は利己的じゃない。それより、気になったのは断り方だ。
 同級生となって一年余りになるが、初めて目の当たりにした冷徹ぶりが、別人のように思えてしまった。

 ──本当に好きなのは、わたしじゃないのよ。

 この意味するところは何なのだろうか。自分はずっと想ってきたからこそ、あの機会しかないと思った。
 それなのに、この想いは嘘だと断言した。では、彼女の中には、俺が本当に想っている人の見当が付いているとでも言うのか。

(さっぱり解らない……)

 外から、蝉の鳴き声が聴こえてきた。そろそろ微睡みの時も終わりを告げる頃だ。
 そんな中で直也は未だ、思いを廻らせていた。






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