投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 546 やっぱすっきゃねん! 548 やっぱすっきゃねん!の最後へ

fainal1/2-19

「先ずは第一関門突破だな」
「肩も不安なかったし、次はライトとキャッチボールだね!」

 その時、佳代の中であるアイデアが閃いた。

「監督!」
「どうした?」
「試合前に、円陣組みませんか!」

 永井の中で疑問が涌いた。あまり試合前から円陣は組まないからだ。その辺りを訊いてみると、

「サッカーなんか、試合前に円陣組んで格好いいんですよ!」

 そう言って嬉しそうに笑っている。永井は「サッカーと比較するとは不謹慎な」と思ったが、すぐに思い直した。

(ずっとベンチで鬱ぎがちだったのが、これだけ喜んでるんだ)

 永井は円陣を組むのを許可した。

「みんな集まって!」

 佳代の号令に、皆が周りに集まった。

「これから試合前の円陣を組むから、みんな準備して!」

 全選手十六名が、肩を抱き合い輪を作った。

「初めてじゃないか?試合前の円陣なんて」
「そうだな。なんか新鮮だな」
「いつもは中盤の攻撃前とか、気合いを入れる時だからな」

 銘々が試合前の円陣に馴れないせいか、色々な感想を語っている中、佳代が「はい、こっち集中して」と注意を促した。

「今から、藤野コーチが言ったことを実践します」
「なんだ?実践って」

 直也が訊いた。

「みんなで、心をひとつにすること」

 全員の顔に緊張が疾る。声を出す者は誰もいない。
 そんな雰囲気の中で、佳代は次の言葉を言った。

「今日、わたし逹は笑顔でこの球場を後にする。絶対だからね!」

 次の瞬間、全員があらん限りに掛け声を発した。

 バックネット側フェンスの扉が開き、審判達が姿を現した。

「集合!」

 主審が右手を高く突き上げ、両チームの選手を呼び寄せた。

「いくぞ!」

 キャプテン達也の掛け声と共に、選手全員が全速力でホームベースへと駆け込んで行く。
 ベースを挟み、両チームの選手同士が厳しい眼をぶつかり合わせると、自然と闘争本能にスイッチが入る。

「ただ今より、沖浜中対青葉中による決勝戦を始めます!一同、礼ッ!」

 互いが、帽子を取って頭を下げた。試合前の相手に対する礼儀だ。
 同時に、スタンド全体から拍手が沸き上がった。中学生の大会にも拘わらず、スタンドのほとんどを観客が埋めていた。

 ニ列になって並んでいた選手逹が二手に分かれる。先攻の沖浜中はベンチに、後攻の青葉中はグランドへと散った。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 546 やっぱすっきゃねん! 548 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前