投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

私はメアリー
【その他 その他小説】

私はメアリーの最初へ 私はメアリー 0 私はメアリー 2 私はメアリーの最後へ

私はメアリー-1

 どんなに、世の中を見渡せても、私には、そこを歩く足がありません。

 どんなに、愛らしいものを見つけても、私には、それを抱く腕がありません。

 どんなに、美しいものを眺めても、私には、それを理解する心がありません。


 私は、空虚な自分をじっと見つめました。
 無論、何もありません。

 だから私は、外を見ました。
 自分に無い全てがありました。
 でも、どれが私にとって必要なものなのか、解りません。

 私は、ずっと迷っていました。

 だから、私は一番傍にあったものを、自分にしてみました。

 それは、歪なブリキの怪物の玩具でした。

 でも、それは私。
 私の足は歪んでいて、腕は無くて、心もまだ、空っぽでした。
 でも、足がある。歩いてゆけます。

 ある時、私は一人の人間に出会いました。
 私は頼みました。

「あなたの腕を下さい」

 人間は、私を『化け物』と呼び、逃げて行ってしまいました。

 私は化け物。化け物…?

 私は化け物と名乗る事にしました。
 名付けてくれた人間に感謝しました。


 暫くして、また、人間に出会いました。
 私は頼みました。

「私は化け物です。あなたの腕を下さい」

 その人間は、こう答えました。

「おのれ、恐ろしい化け物め。ワシが退治してくれる」

 退治される。それは、私が壊される事。
 それは、少し嫌でした。
 だから、聞いてみました。

「どうして、私を壊すのですか?」

 すると、答えは、すぐ返って来ました。

「お前が化け物だからだ」

 化け物は壊されるモノ。私は化け物。私は壊されるモノ。
 私は壊されないといけないモノ。

「それでは、仕方ないので、私を壊してください」

 私がそう言うと、人間は不思議そうな顔をして私を見つめてきました。

「変な事を言う奴だ。お前は死にたいのか?」

 死ぬ。壊れる。私は壊れないといけない。私は死なないといけない。

「はい。死にたいです」

 私はそういうモノだったのです。自分が解った気がして、嬉しく思いました。

「ふん、殺す気も失せたわ。勝手に死ぬがいい」

 人間は、私を殺してはくれませんでした。何がいけなかったのでしょうか。


私はメアリーの最初へ 私はメアリー 0 私はメアリー 2 私はメアリーの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前