閉店間際-4
「え、えっと…」
彼女は真っ赤になって目を泳がせる。
達彦は真顔で首を傾げながら、内心彼女の動揺した様子にほくそ笑んでいた。
「あ…でも、その、何でもいいので。」
彼女の返答に、達彦はわざと困惑した表情をつくる。
「何でもと言われても、これだけたくさんあるので…ジャンルだけでも絞ってもらわないと。」
「あ、はい。そうですよね。」
「どうするんですか?」
少し苛立ったように言ってみせると、彼女はやっと口を開いた。
「あ、あの…ぇ、SMで…」
「え?なんですか?」
「SM、のもので…」
もちろん、一度目も聞こえていた。
達彦はSMプレイの棚に行き、再度振り返った。
「女性が攻めるのと攻められるの、どちらが良いですか?」
「あの、攻められる、方が、」
「攻められるのが好きなんですね。」
わざと言葉尻をとらえて言ったが、彼女は赤くなるばかりで何も言わなかった。
お客をからかうのもこれくらいにしないと、と達彦は一本のDVDを手に取った。
「これとか、いいんじゃないすか。」
手渡して戻ろうとすると、「あの」と後ろから声をかけられた。
振り返ると、彼女はAVを両手で握り締めて、達彦を見ていた。
「あの、良ければ、一緒に見ませんか?」
「はぁ?一緒に見てどうする…」
……もしかして。
達彦はゆっくりと近づいていく。
じりじりと棚の方に追い詰められ、彼女は少し怯えた様子で彼を見る。
達彦が彼女の顔を覗き込み、触れるギリギリまで距離を詰めた。