閉店間際-3
---夜。
いつもと同じ時間に、彼女は来た。
少し暖かい日だったが、厚手のコートを着ていた。
達彦はカウンターに頬杖をつき、その背中に唇の動きだけで何の気無しに尋ねる。
君って変わってるね。
なんでいつもAV借りてんの?
たまには一人でしてるとこ、見せてよ。
彼女がカーテンの向こうの棚に姿を消したところで、達彦はあくびを噛み殺した。
今日はさっさと帰って抜いて寝るかな。
首の後ろを何気なく撫でた時、彼女が不安そうな顔でこちらを見ていることに気づいた。
「…あ、あの…」
「どうかされましたかー?」
立ち上がるのは面倒だったし、出来るだけ無関心に聞こえる声で呼びかけると、彼女は何かを訴えるような表情で目を泳がせた。
…なんだよ。
達彦は仕方なく彼女の方に歩いて行った。
彼女は彼を誘導するようにアダルトコーナーに入っていく。
「なんでしょうか」
「あの、お、オススメとかありませんか…?」
「は?」
「男性の意見も聞いてみたくて…」
態度は奥ゆかしいが、自分で言ってることが分かってるのか?
つい彼女を見ると、彼女の瞳は揺れ頬が紅く染まった。
なんだよ、それ。
男の意見聞いてどうしようっていうわけ?
少し興奮を覚えつつも、何食わぬ顔でAVを物色する。
「そうですね、俺は、」
最近見たものを取り出そうと探し始めたが…少し、悪戯心が芽生えた。
「うーん、でも…」
考えるような声をだし、彼女の方を振り返る。
「こういうのは好きずきですから、お客さんの好みも聞いておかないと。」
「えっ」
彼女は少し驚いたようにまばたきをする。
「どういうのが好きなんですか?」
極めて冷静な口調で尋ねる。
…どうされんのが良いのか、言ってみろよ。
そう心の中で尋ねて、小柄な彼女を見下ろした。