閉店間際-2
---次の週も、その次も、彼女は一人で来た。
そして恥ずかしそうにAVを借りて行く。
こう何度も続いているということは"自分用"なんだろうな、と達彦は考える。
彼は更なる興奮を覚え、彼女が来る度に下半身が少し熱を持った。
もちろん、彼らの単なる店員と客という関係は変わらなかった。
しかし、珍しく昼間にアルバイトのシフトを入れた日、達彦は妙な事実を知った。
「…え、何それマジで?」
あまり親しくないバイト仲間の反応に、達彦は拍子抜けする。
昼休み、二人で昼食を摂りながら、同じように深夜に入ることの多い太田に彼女の話をしてみたのだ。
もちろん、太田も当然知っていると思ったから。
「マジですよ、太田さんの時にも来るでしょ。」
「いや、来てねぇよ。」
何を怒っているのか、太田は眉間に皺を寄せて憤慨しながらも、もぐもぐと口を動かした。
「覚えてないだけじゃないっすか?」
「あんな人の来ない時間に、そんな女が来てたら忘れるわけないだろ。
大体、この前の土曜お前とシフト交代したときだって、デブのおっさんしか来なかった。」
確かに、あんな子がAV借りるなんて状況は、話の種にもしたくなる。
でも…
「え、土曜、来なかったですか?」
「だから、デブしか来ないって言ってんだろ?
しかもそいつ40分もうろうろしたあげく、何にも借りずに帰りやがって、」
話しながら食べていたものを喉に詰まらせた太田は、慌ててお茶を飲み、閉め作業が遅れた文句を話した。
休憩が終わるころ、彼女の顔や体型を熱心に聞かれたが、太田にてきとうな返事をして、達彦は考えた。
じゃあなんで俺は、毎回彼女に会うんだ…?
決まった曜日に入ってはいるが、同じ曜日に入ることもある太田が見たことがないというのは少し引っ掛かった。
…ま、偶然だろうな。
つい期待をする自分に呆れ、達彦はいつもと同じように仕事に取り掛かった。