青空教室-1
僕らの学校には青空教室と言う物がある。そこには障害を持った人やいじめによる不登校などで普通のクラスにいられない人達が来るクラスだ。僕は言葉が喋れない。目も見える。耳も聞こえる。でも声が出ない。だから僕は何かを伝えたい時字を書くしかない、だからって変だとは思わない。声が出ない僕は僕だけど声が出る僕は僕じゃないから…
「みなさんおはようございます」
僕らの担任の名前は吉田浩美(よしだひろみ)先生だ。36才の女の先生で皆から『ひろちゃん』と言われてる。僕の場合は書いている。
「じゃあ出席取ろうか大きな声で返事してね。赤井健児(あかいけんじ)君」
「あぁー」
なぜか僕は声を出そうとすると『あ』の発音しか出ない、不思議だなぁといつも思う。
「はいじゃあ昨日出した宿題を机の上に置いてね」
ひろちゃんは毎日、僕達に宿題のプリントを出す。このプリントは一人一人違って僕の宿題は九九を書いてくる事だった。
「あら、健児君がんばったわね。えらいわよ」
「あぁー」
僕は誉められて恥ずかしかったから顔を手で隠した。
「じゃあ今日の一時間目はプールです。皆、水着持ってきた?」
「ひろちゃんね私ね水着ねもってきたのよ」
「あらよかったわね千絵ちゃん」
僕の後ろの席には上沼千絵(かみぬまちえ)が居る小学6年生だけどまだ引き算がうまくできない女の子だ。
この前のプールの時間、吉野清(よしのきよし)が千絵に『お前胸でかいよな』と言って千絵に『スケベ』と言われていた。僕はスケベの意味がわからなかったのでひろちゃんに書いて聞いてみたら『ん〜』としか言ってくれなかった。今度、お母さんに聞いてみよう。でもいつ見ても千絵の胸はでかいな。
僕はプールに行くまでに普通の教室の前を通ったその時に、こんな声を聞いた。
「うぇあいつらもプール入んのかよ。やべぇよ障害がうつる。俺今日プール入んねぇ〜」
僕はその言葉に疑問をもったがそのままプールに向かった。
プールの時間、僕はひろちゃんに手を引かれながら泳いだ。千絵はすごくはしゃぎながら犬掻きをしていた。でも僕の中にはあの時の声が頭から離れなかった。僕達の障害はうつるのかな?そんな事を考えていたらいつのまにか放課後になっていた。僕はランドセルをせおい青空教室を出る。
「あぁー」
学校から僕の家までは歩いて30分かかる。途中でしたくなったら困るので、僕はトイレに行くことにした。
トイレに行くために今日の朝に通った教室の前を通ろうとした。そうしたら中から声が聞こえてきた。
「う…く…ん…よ…前」
僕は気になりドアを少し開け中を覗いてみた。中には少年二人と千絵が居る。千絵は泣いている。僕は少年二人の言葉を聞いてみた。
「うわっまじくせぇうんこの匂いがする。お前、体あらってんのかよ」
「だから障害は困るんだよ。臭くてよ」
僕は千絵といつも一緒のクラスだが臭い匂いがしていた事は一度も無い。
「お前さ自分が障害者って事わかってる?」
「死んで来世に期待しろよ」
「あーそれともあれか胸でかいからAV女優でもいいんじゃねぇ」
「本当胸だけはでかいよな」
一人の少年が千絵の胸をわしづかみにした。
「痛いよぅやめてよぉ」
「あぁー」
僕は無意識の内にドアを開け二人の少年の顔を殴った。
「うわぁぁぁ」
二人とも泣きながら教室を出ていった。