君を称える言葉が見つからない-2
(――僕も変わったものですね……)
ふと、何年も昔のたわいない雑談を思い出し、思わず笑いがこみ上げてくる。
「どうかなさいました?」
くっくと笑うヘルマンを、腕の中でサーフィが見上げた。
「君が出迎えてくれたら、少しばかり、昔の事を思い出しました」
あの頃、サーフィはまだ三つになるかならないかで、ヘルマンを毛嫌いしていた。
ヘルマンも、まさか彼女とこういう事になるなんて、思ってもいなかったのに……。
ここはまだ玄関口で、コートも脱いでいない。
いましがた、錬金術ギルドの仕事から、やっと家に帰ってきたところだった。
不死のヘルマンにとっては、睡眠も食事も嗜好品だ。
長すぎる人生の気晴らしとして取るくらいだから、急ごうと思えば不眠不休で動ける。
その結果、三ヶ月分の仕事を二週間で終わらせたのだが、それでもサーフィの顔をみれない期間としては、十分に辛かった。
玄関でサーフィを見るやいな、どうにも堪えきれず抱きしめて、散々キスを貪ったのだ。
「……貴方は、長生きしてらっしゃいますものね」
サーフィが少し拗ねたような口調で言う。
おや?と、思ったが、念のため尋ねてみた。
「もしかして、僕の女性経験が気になりますか?」
当り。
みるみるうちに真っ赤になったサーフィの顔が、言葉以上に証明している。
「っ!!い、いいえっ!!違います!!」
必死に否定するサーフィの姿に、顔が勝手にニヤける。
「安心してください。他の女性を思い出したわけではありませんよ」
「そ……そうですか……」
あからさまにホッとした様子のサーフィに、また口付けた。
「ん……ん……ふ」
唇はすぐに柔らかくほどけた。
サーフィは本当にキスが好きだ。
そしてヘルマンもそれに負け劣らず『サーフィとする』キスが好きだ。
歯列をなぞり、小さな舌をねぶって吸い上げる。
「っふ……ぅ……」
唇の隙間から漏れ零れる吐息が、背筋をゾクゾク痺れさせた。
「あっ!その……先に……お、お風呂に入ってこようかと……」
足元をふらつかせながら、サーフィが両手を必死に突っぱねた。
「ふぅん……そうですね。僕も帰ってきたばかりですし……」
品の無い考えが頭に浮かび、ニンマリ口端が緩む。
「サーフィ、一緒に入りませんか?」