競泳大会-1
「全快復活っ!」ケンジとケネスが叫んだ。彼らは再びきわどい水着姿で、今はプールサイドにいる。
「こんな立派なプールまであるんだね。」龍が感嘆の声を上げた。ビーチから少し入ったところに、椰子の木やフェニックスに囲まれるようにしてそのプールはあった。
「そりゃ、あんだけがーがー寝れば全快だろうよ。」ミカがストレッチをしながら言った。「たいして疲れることもしてないくせに。」
「ねえねえ、なんでミカさんストレッチなんかしてるの?」真雪が訊ねた。
「泳ぐ前は準備体操、っていつも口酸っぱく言ってるだろ、真雪。」
「リゾートなのに?」
「見てみろ。」ミカはプールをあごで指した。「今はちょうど午後のティタイム。泳いでるやつはほとんどいない。」
「それで?」
「シンチョコ杯海棠家シンプソン家対抗家族競泳大会をやるぞっ!」
「え?」健太郎も真雪も驚いて訊き返した。「シンチョコ杯、・・・何だって?」
「だから『シンチョコ杯海棠家シンプソン家対抗家族競泳大会』だっ!」
プールサイドには、デッキチェアに寝そべったり、パラソルの下のテーブルでフルーツを楽しんでいたりと思い思いの午後の時間を過ごしている人たちがいた。
「いいか、まず第1泳者、シンプソン家は健太郎、海棠家は龍。得意の平泳ぎ。」
「えー、絶対かなわないよ、ケン兄ちゃんになんか・・・。」
「つべこべ言うなっ!」ミカが一喝した。「後でどんだけでも取り戻せる。第2泳者、シンプソン家真雪、海棠家ミカ。クロールでいくか。」
「えー、ミカさんと?」
「泳ぐ時は『ミカさん』じゃないっ!『ミカ先生』と呼べ。」
「ここまでで、どうなるかちょっとわからないな。」健太郎が腕組みをして言った。
「最終泳者。シンプソン家ケネス、海棠家ケンジ。もちろんバタフライっ!」
ケンジとケネスがさっと手を挙げて応えた。「行きますっ!」
「マユミ、スタートとゴールの判定お願いね。」
「わかった。任せて。」