出発-1
あくる8月3日。
「20th. Anniversary! Great Summer Vacation for Mayumi & Kenji in HAWAII〜!イエ〜イ!!!」ケネスが叫んだ。
「ケニー、大声出すなっ!他のお客さんに迷惑だろ?しかも滅多に使わない英語なんかで叫びやがって。」
「ええやんか。めでたい日やねんから。」
「なんでめでたいんだよ。」
「今日はケンジとマーユの初体験記念日。しかも20周年っ!」
「こ、こらっ!ケニー、声が大きい。子供に聞かれたらどうするんだよ。」
空港に向かう電車の中で大人4人と子供3人に分かれてボックス席に座っていた。子どもたち3人はトランプで盛り上がっていて、そんなケンジの心配は杞憂以外の何物でもなかった。
「ごめんなさいね、ミカ姉さん。」マユミが言った。「切符の手配からホテルの予約まで何もかも任せちゃって・・・。」
「いいのよ。そもそもこの計画、あなたたちには秘密であたしとケネスで進めてきたんだから。旅費さえ割り勘なら何の問題もないよ。」
「も、もちろんよ。」
「でもさ、よくこんな高級ホテルの予約が取れたな、ケニー。」ケンジがホテルのパンフレットを広げながら言った。
「コネや、コネ。」
「コネ?」
「わいの親父がカナダで店やってた頃からのつき合いなんや、このホテル。」
「へえ。」
「カナダ人、けっこうハワイに行ってるんやで。わいもこのホテルには何回か泊まったこと、あんねで。」
「そうだったの。」マユミが言った。