出発-2
空港で昼食を済ませ、早めに出国審査を終わらせた7人は搭乗口前ロビーで語らっていた。子どもたち3人はウノで盛り上がっている。
「まだフライトには時間があるわね。」ミカが言った。「ケネス、付き合って。これからの計画を話し合うよ。」
「了解。ミカ姉。」ケネスは敬礼をしてミカと一緒に席を立った。振り返りざまにミカが言った。「あなたたちもぶらついてきたら?」
「そうするよ。ちょっと歩こうか、マユ。」
「うん。」
健太郎が顔を上げてショッピングエリアに向かうケンジとマユミを見た。
「おい、マユ、」健太郎が肘で真雪を小突いた。
「何?ケン兄。」真雪も顔を上げた。
「双子の兄妹ってさ、あんなにいつまでも仲がいいものなのかね?」
「いがみ合うよりいいんじゃない?」
「そうだけどさ、なんかケンジおじと母さんって、それ以上って感じ、しないか?手までつないでるし・・・。」
「双子だしね。そんなものなんじゃない?」
「俺たちあそこまでしないだろ?」
ケンジは不意に足を止めた。
「どうしたの?ケン兄。」
「水着・・・・。」
「あ・・・・。」マユミも立ち止まった。
それはあの夏、マユミが着ていたビキニの水着によく似たものだった。
「このマネキン、お前に似てる。」
「えー、やだー。」
「あの水着、どうした?」
「まだとってあるよ。真雪にどう?って聞いたら、恥ずかしいからいやだ、って言われた。」
「ふうん。やっぱりあの頃のお前って、意外に大胆だったのかな。」
「自分じゃそんなこと思ってなかったけどね。」
ケンジの脳裏にあの時のマユミの白い肌とその感触が甦り始めた。
「マユ・・・。」ケンジはマユミの肩を抱き、頬に軽くキスをした。
「ケン兄・・・、人がいるよ。」マユミが囁いた。
ケンジは無言でマユミの手を引いてそこを離れた。