契り-7
しかし、木村にはまだその意味が分からなかった。
「いえ、あの・・こんな僕を相手にしてくれる女の人なら」
「では、このおばさんでも良いの?」
雪子は真剣だった、けっして媚びてはいなかった。
献身的な気持ちだったが、何故か身体が濡れていた。
「ええ、いいのよ、木村君はお国の為に行くんだもの、
おばさんがして上げられること、それくらいしかできないの、
だから、私で良ければ、木村君の童貞をいただくわ、それでいい?」
雪子は優しく微笑んでいた。
それがセックスということを・・・
この意味することを雪子は知りながら。
夫が戦死したからといって、人妻が学生とセックスに戯れるなど。
それは許されない行為なのだが、誰もが何時死ぬかというこの時、
人は己の気持ちに忠実になっていくのだ。
それが淫らなことでも、聖なる行いでも。
だれもそれを非難することなど出来ない。
その夜は久し振りに静かな夜だった。
敵機の音も聞こえない。
雪子は木村の為に精一杯の食事を用意した。
普段余り口に入れることさえままならない、小さなお菓子など。
勿論、赤飯を炊いて、若者に食べさせた。
若者は雪子に感謝しながら、それを頬張って食べた。
「どう・・木村君、美味しい?」
「はい、とっても」
「そう、よかった」
雪子は嬉しかった、
もしこれが少年との最後の夜だと思うと涙が止まらない。
食事が終わった後、雪子は少年を風呂に入れた。