契り-6
「はい、その・・多分行くと、死んでしまうかもしれません、だから」
「・・・」
「だから、だから・・その前に女性と・・あれがしたいんです」
彼は顔を真っ赤にして、一気に言った。
「え?はい、あぁ・・セックスがしたいということね、それで?」
「どこか、そういう場所があるって聞いたんですが、知りませんか?」
雪子は、彼の言葉に驚いていた、自分を抱きたいと言うのかと思ったからだ。
戦地に借り出される若者が刹那の思いに、
死ぬ前にセックスをしたいということは聞いて知っていた。
そういう、いわゆる売春宿みたいな処が有るとは聞いていたが、
そのことだろうか?
それは死ぬ前に、自分の子孫を残しておきたいと言う人間の本能なのだろう。
しかし、彼女はそんな場所は知らない。
彼は、数日中にはここを出て行ってしまう。
旅立ったら、もう二度とここには帰れないかも知れない。
生きて帰ることさえも・・
(何とか、彼の一途な思いを叶えてあげたい・・)
思い悩んだ結果、雪子は決心をする。
「分かったわ、木村君の願いをおばさんが叶えてあげる」
「えっ?本当ですか」
「でも、木村君のお相手は、若い娘さんでなければ駄目?」
雪子は、木村の顔をじっと見つめた、その眼は真剣だった。
その時は決して浮ついた心ではなかった。
数日後には、戦地に駆り出されるこの青年・・
彼の、この熱い思いを私の身体で良ければ・・
そう思うと、雪子の身体は熱くなっていた。