契り-5
「あぁ・・おばさん」
青年は始めて女の人に抱かれた。
雪子の乳房が彼の胸を押しつけ、彼は戸惑っていた。
この手をどうしていいのやら・・
ただ、雪子に抱かれていた。
「あら、ごめん、木村君、驚いたでしょ」
雪子は青年から身体を離し、明るく笑った。
この間、夫を亡くし、この青年までも失うことに・・
そう思うと何故か切なくなり、青年が愛おしくなっていた。
いつも真面目な木村に、雪子は好意を持っていたのだ。
彼の暇なときなど、娘がいた頃は勉強を教えて貰っていたこともある。
「じゃあ、おばさんは木村君にお別れのご馳走をしてあげるわね、
あまりたいした物ないけれど」
「はい、ありがとうございます、おばさん、いつも優しくして貰って」
「いいのよ、私が出来るのはこれくらいしか無いから」
雪子は笑って、ささやかな手料理を木村の為に心を込めて作った。
食事が終わってから、木村は言った。
「美味しかったです、これでおばさんのご飯が食べられなくなると思うと」
「あの、木村君・・」
「はい、奥さん?何でしょう」
「寂しいわね、木村君が居なくなると思うと、おばさんも寂しいわ」
「はい、僕もです」
「出征のお祝いに私から何か上げたいと思うの、何が良いかしら?」
それを聞いた木村は目を輝かせていった。
「おばさん、恥ずかしい話なんですが、僕はまだ童貞なんです・・」
「ええ?・・は、はい、それで?」
「もう、すぐ戦場へ行かなければなりません、その前に・・」
「その前に?」
雪子は、木村が何を言おうとしているのか、気になった。