第4章-1
私は有希子という女と逢うことにした。
彼女とは、私が運営するネットの中で知り合った女だった。
逢うまでは、メールでやり取りしたり、携帯電話で話もした。
そして、その有希子が決心して私とリアルで逢うことを決断したのである。
有希子は、すでに始めの段階で私と逢うことを決めていたらしい。
逢えば、縛られ、辱められ、犯されることも覚悟はしていたようだが。
その前に、本当の私という人間を知っておきたかった、
逢ってから後悔はしたくない・・・
そう思っていたと有希子は後で告白した。
だが、それほどに周到に計算が働いたわけでなく、
自分の心に合う方なのかの見極めをしたかった・・・と後で素直に言った。
私はそれを聞いて、特別に感動したり、
嬉しかったわけではない。
しかし、有希子という女が、そこまでに拘ったのには私なりに興味がある。
携帯電話で始めて声を聞いたときから、
有希子の人なりが私には分かった。
中年女のしっとりと落ち着いた声でいながら、
その声の中に、ときめきのような戸惑いと少女のような気持ち、
どことなく漂う上品さを私は感じたのだ。
私が今まで付き合った女の中には、こういうタイプの女は居なかったからだ。
そういう意味では私は有希子に興味を持っていた。
おそらくは、私とのこんな経験は有希子は初めてだろう。
有希子は結婚前に一度だけ付き合った男に強引に犯されたと言ったが、
それ以外では夫を除き男を知らないと言う。
そういう女を剥き出しにして、
上玉と言われる女を縛るのも悪くないな、と私は思うのだ。
興味をそそられるのも悪くはない。
私は有希子と約束をしていた。
すでに彼女の素性は知っていた、名前も住所も、家庭のことも。
有希子は私に全てを、心と身体を任せると言った。
しかし、
それは私と居るときだけで、誰にも秘密にして欲しいと言った。
勿論、私は承知した。
それで彼女は安心して、私に全てを任せることにしたのだろう。