二人の夏-5
「ケン兄、まだあたしを抱いて満足する?」
「するする。当たり前だろ。年に一度のお前とのこの時間は俺にとっては今でも最高の癒しだ。」
街中のシティ・ホテルの一室でケンジとマユミは語らっていた。
「あの日のプレゼント、まだ持ってる?」
「あのペンダントはお前んちだろ?」
「そうか、そうだったね。結婚する時あたしたちの思い出の品は全部ケネスが引き取ってくれたんだった。」
「まだとってあるのか?」
「天井裏の箱に入ってるよ。」
「そうか。」
「そのうち、健太郎と真雪にあげようかな、って思ってる。」
「そりゃあいい!」
「あの子たちに、私たちの昔話を話せるのは、いつになるかなあ・・・。」
「まさかさ、マユ、」
「ん?」
「健太郎と真雪も俺たちのように内緒でつながってたりしないだろうな・・・。」
「そうなってたら、どうする?」
「さりげなく訊いてみるかな、今度のスクールの日あたりに。」
「え?何て訊くの?」
「『お前、妹をどう思ってるんだ?』とかさ。」
「そんな訊き方じゃ、ホントのこと言わないよ。」
「それもそうだな。大人には本当のこと、言うわけないか。」ケンジは頭を掻いた。
「あたしたちといっしょだよ。」マユミもケンジも笑った。
「そうそう、あの箱にはチョコの空き箱も山ほど入ってるんだよ。」
「え?」
「ケン兄があたしに買ってくれたチョコの空き箱。」
「そんなものまでとってたのか。」
「だって、捨てられないよ。」マユミが微笑んだ。そして続けた。「もう一つの誕生日のプレゼントは?」
「今日穿いてきた。」
「嬉しい。実はあたしも。」
「じゃあ、見せ合って確認しよう。」
「もう、ケン兄のエッチ。」
二人は着衣を脱ぎ、ショーツだけの姿になった。
「ケン兄の体型、全然あの頃と変わらないね。」
「お前も。」
「えー?無理があるよ。あたしたちもうすぐ36になるんだよ。それに二人の子持ち。」
「俺の中では、お前はあの時のままだ。」
「ケン兄・・・。」
ケンジはマユミの身体をそっと抱き、広いベッドに横たえた。そして身体を優しく重ね、キスをした。「でも、よくもまあ、あんな一人用の狭いベッドでやってたもんだよな。」
「ほんとだね。あたしはともかく、ケン兄は身体が大きかったから、無理してたんじゃない?」
「あの頃はほとんど気にならなかったよ。お前に夢中で。」
マユミは下からケンジの首に腕を回した。
「お前のこの動作が、スタートの合図だったな。」
「え?そうなの?」
「そうさ。え?わざとやってたんじゃないのか?」
「ううん。でも、ケン兄と始める時に、無意識でやってたのかも・・・。」
「俺、ずっとそう思ってた。」
「来て、ケン兄・・・。」
「うん。」
「あたしといっしょにいこ。」
「あの頃のように・・・・。」