『黒い』-2
ただただイヴは目を見開いて、白く眩しい部屋を見つめる。そして耳に神経を集中させる。
雫の音がするたびに、その音はイヴの頭に近い所から鳴るような気がした。
何度も何度もその音は、止まるのではないかと思わせる間合いでイヴの頭の中で響く。
頭に近づくといっても、音が大きくなるのではなく切れぎれの補助の音が加えられる事による近づく、であった。
次々と加えられる補助の音とともに、イヴは水の感覚さえ与えられていた。冷たく、流れる水が素足に触れる。
切れぎれの補助の音が全て揃った時、イヴはこれが完全な音なのだという事を知っていた。水に飛込んだ直後に聞こえる、パチパチという水からの洗礼にそれは似ている。
イヴはいつの間にか目を瞑り、息をあらげていた。イヴには白い部屋が眩し過ぎたらしい。
闇で少しの間瞳を休ませると、イヴは静かに目を開いた。
そこには、暗闇でもなく光でもない黒が、イヴの足にまとわりついていた。
黒い雫の集合体。
それらはベッドの下から床を埋め尽くそうと、今も雫を落とし続けている。